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真奈美の父は刑事だった。
本庁捜査一課の殺人課警部補である。名うての敏腕デカだったが、そのあまりの強行捜査に容疑者で深い恨みを抱くものが多く、ついに妻響子が自宅で虐殺される事件が起きた。
その場に幼い真奈美がいたが、虐殺を見せつけるように犯人は彼女には指一本触れなかった。
幼い真奈美が変わったのはそれからだった。
父上重は娘の変化になにも気づかなかった。彼女が女子中学生になって、それに気づいたのは上重の後輩堺だった。真奈美はすれ違う人間の目の奥を見て、それが殺人者と見抜く稀有な能力を持ってしまった。
目前で母を虐殺した男の目の奥に、それを見たからだ。
男には息子がいた。真奈美と同じ年の白貴と言う名の子供だった。
真奈美は一日に何人もの殺人者とすれ違う。
だが、彼女はどうしてもそれらの者たちを憎む気にはなれなかった。
なぜなら殺人者は憎悪や恨みだけを抱いて生きているのではないからだ。
その目の奥深くには例外なく深い悲しみがあった。危険な悲しみだった。
真奈美はその悲しみに強く惹かれた。母を虐殺した男にもそれがあった。
そんな人間たちをみるたびに、真奈美は「生まれ生まれ生まれ、生まれて生の始めに暗く。死に死に死に死んで、死の終わりに冥し」と言う空海の言葉が浮かんだ。自分も例外ではない。
そんな一人なのだ。彼らを憎むことも恨むことも蔑むこともできない。
文字数 21,403
最終更新日 2020.06.07
登録日 2020.05.10
十八才にして四十人以上を斬った豪志錬太郎は、
土方歳三の生き方に心酔して新選組へ入る。
そこで賄い方のお勢の警護を土方に命じられるが、
彼の非凡な運と身に着けた那智真伝流の真剣術で彼女を護りきる。
お勢は組の最高機密を、粛清された初代局長芹沢 鴨から託されていた。
それを日本の為にとを継承したのは、局長近藤ではなく副長の土方歳三であった。
機密を手に入れようと長州、薩摩、会津、幕府、朝廷、明治新政府、
さらには当事者の新選組までもが、お勢を手に入れようと襲って来る。
機密は新選組のみならず、日本全体に関わるものだったのだ。
豪士は殺到するかつての仲間新選組隊士からお勢を護るべく、血みどろの死闘を展開する。
文字数 14,329
最終更新日 2020.05.30
登録日 2020.05.11
「動かずば、闇に隔つや花と水」 これは新選組一番隊隊長・沖田総司の辞世の句である。
辞世の句とは武士が死の前に読む句のことである。
総司には密かに想う人がいた。
最初の屯所八木邸主人の若妻お雅である。
むろん禁断の恋だ。
実の兄貴と慕う土方にさえ告げたことはない。
病身の身を千駄ヶ谷の植木屋の離れに横たえ、最後の最後に密かに辞世の句にお雅への想いを遺した。
句の中の花とは、壬生八木邸に咲く若妻お雅。
水とは、多摩、江戸、そして大坂・京と流れながら、人を斬ってきた自分のことである。
総司のそばには、お雅の身代わりにもらった愛猫ミケが常にいた。
彼の死の直前にミケは死んだ。その死を看取って、総司は自らの最後を迎えた。
総司とミケの死を知り、お雅はひとり涙を流したと言う。
文字数 69,819
最終更新日 2020.05.29
登録日 2020.05.11
土方歳三は上野松坂屋に丁稚奉公をしていたが、年季明けまで勤め上げ支店を出す資格まで持っていた。
彼ならきっといい店を作ると、番頭たちも気いしていた。
が、多摩の郷里へ戻った土方は、事もあろうに近藤勇の天然理心流道場へ入門したのだ。
土方の実家は商売のうまい豪農だった。
のちに道場の仲間たちと京へ上がるのだが、のちの新選組を組織して天下になを轟かしたのは土方の商人としての才覚だった。近藤もこれを見抜いていた。
文字数 57,751
最終更新日 2020.05.27
登録日 2020.05.26
無外流道場へ通う一文字織部は、道場主の娘小夜に好意を持っていた。
が、入門して一年、いまだに切紙にもなれない織部に小夜は愛想をつかした。
すでに免許取りである師範代の宮森兵部に小夜は惹かれていた。
武道家の娘なら当然である。
自らも免許取りとなるべく一念発起し猛稽古を始める織部に、親友の頼母が言った。
剣道の免許皆伝は別名一万面とも言われ、一万日すなわち三十三年猛稽古をしなければ取れないと言われていた。
では、なぜ兵部は若くして免許を取っているのか。それは天賦の才としか言えなかった。
どうしても小夜を忘れられない織部は、真剣でのでの真剣での実戦で行くしかなかった。
親友頼母から薩摩示現流の形を教わった。
人を斬るには道場の竹刀稽古より、真剣の示現流である。
すべては小夜の心を捉えるべく、真剣勝負の世界へ飛び込んでいった。
示現流を使えることを知った目付の大野掃部は、織部に上意討ち見届け人役を命じた。
文字数 10,422
最終更新日 2020.05.26
登録日 2020.05.24
彦根藩井伊家の藩士五名に、一年前父の首を落とされ斬殺された鷹木豪介は、報復を誓っていた。
まず江戸井伊家藩邸下屋敷詰め大槻主水の後をつけ、死闘の末に斬り首を落とした。あと四名である。
全て首を落とすまでやめない。すでに姓名も居場所も全て調べ上げている。四人は井伊家江戸上屋敷、中屋敷、下屋敷かのいずれかにいる。必ず四人の首を挙げて父の恨みを晴らす。
五人に共通しているのは、北辰一刀流伝馬道場の高弟であることだった。いずれ凄まじい反撃が始まる。
それでも一人づつ斃して行くのだ。同じ井伊家の連れがいたらそれもやる。。それが豪介のやり方だった。
結果十人以上斬ることになるだろう。それは彦根藩三十五万石と一戦交えることを意味している。
信州上田藩の江戸屋敷勘定方を、高齢で退き余生を上田で過ごそうとしていた矢先であった。
豪介は父の後を継がず、浪人となった。父の仇を討つためである。
豪介には人に言えない秘密があった。知っているのは、恋人八重だけである。
そちらが彼の本業である。料理を一口、口にするだけでその料理の素材が全て分かる他人には真似のできない稀有な才能を持っていた。依頼は八重が持ってきた。それだけで生活して行くのに不自由ない金を得た。
まずい料理も簡単に極上の料理にする、それが豪介の生きがいでもあった。
今にも潰れそうな不味い料理をだす店を、客が行列を作る店にすることができる。これ以上のことはない!
すでに、そうした店が江戸市中に五十店以上もある。
八重にとってはそれが自慢の種だった。
彼女は井伊家と豪介のいきさつを全く知らない。いずれ彼と所帯を持つのが夢だった。
江戸の今にも潰れそうな店にとって、豪介はまさに救いの菩薩、味菩薩だった。
一年後には豪介は刀を捨て、故郷上田へ戻って町人になるつもりだつた。八重も大賛成だった。
だが、大藩井伊家の名にかけて、強力な豪介包囲網の網がジリジリと彼を押し包んで行く。
文字数 3,955
最終更新日 2020.05.21
登録日 2020.05.21
本間道場の筆頭師範代有村十兵衛は、
道場四天王の一人に数えられ、
ゆくゆくは道場主本間頼母の跡取りになると見られて居た。
だが、十兵衛には誰にも言えない秘密があった。
白刃が怖くて怖くて、真剣勝負ができないことである。
その恐怖心は病的に近く、想像するだに震えがくる。
城中では御納戸役をつとめ、城代家老の信任も厚つかった。
そんな十兵衛に上意討ちの命が降った。
相手は一刀流の遣い手・田所源太夫。
だが、中間角蔵の力を借りて田所を斬ったが、
上意討ちには見届け人がついていた。
十兵衛は目付に呼び出され、
二度目の上意討ちか切腹か、どちらかを選べと迫られた。
文字数 16,017
最終更新日 2020.05.19
登録日 2020.05.14
土方歳三は上野松坂屋で丁稚奉公して商人の修行をした。年期明けして家へ戻ると、近藤勇の「試衛館」道場へ入って剣道を習い始めた。後に近藤たちと京へ上がり、新選組を結成するのだが、副長としての彼のやり方は、武士としてのそれよりも商人的で、合理的に時代を先読みした信長に近いものだった。特に戦さには敏感で先鋭的だった。剣ではなく、最新武器を誰より先に手にしたものが時代を取る。薩英戦争、長英蘭戦争の噂を聞くにつれ、そう思った。このままでは幕府、会津、新選組はいずれ確実に亡びる。薩長より先をいく威力ある武器を装備できるなら、新しい時代の天下を新選組が取れる。夢ではない!最先端の武器とは何か、そしてそれを使う戦術とは!土方は模索した。
文字数 39,697
最終更新日 2020.05.17
登録日 2020.05.11
ジュリは先輩を熱愛している。
なのに、仕事となると先輩は鬼になる。
会社は部長がライバル会社に引き抜かれ、危機に瀕していた。
今日もその対応でジュリは先輩と走り回っていた。
鬼の先輩も時々やらかす私のドジで。腰を抜かしそうになる。
ジュリは完全に恋愛ジャンキーだった。
文字数 4,350
最終更新日 2020.05.14
登録日 2020.05.14
真由は十二時間おきに記憶喪失にかかると言う奇病にかかっていた。
でも医者へは行かない。
これによりラッキーなことばかり続いて起きているからだ。
仕事である広告コピーが、クライアントから絶賛され
会社の社長賞五十万をもらったのだ。
しかも憧れの制作ディレクターの先輩とデートの約束までしていた。
現実の私にはできないことばかりだ。
文字数 2,387
最終更新日 2020.05.13
登録日 2020.05.13
飲みすぎて正体を失い、気が着いたらホテルの女子トイレで寝ていた。
女性が大勢出入りしている。
今出て行ったら大騒ぎになり、警備員が来る。
確か今日真紀と別れたはずだ。
そのことを思い出した。
真紀に助けてもらおう。
文字数 5,957
最終更新日 2020.05.13
登録日 2020.05.13
雨の日に彼は必ず現れた。
今日、私は彼と別れなければならない。
両親は彼との結婚に猛反対するが、
私は彼しかいないと思っていた。
私とセックスが合い、彼は性格がよかった。
私は両親の進めに従って、彼を捨てた。
それが私の不幸の始まりだった。
文字数 2,542
最終更新日 2020.05.13
登録日 2020.05.13
私と久美の結婚に彼女の両親は反対だ。
一人娘の久美は両親反対に抗しきれず、父の部下と偽装結婚し
三年後に離婚して必ず戻って来ると言う。
私は絶対に反対した。
そんなにうまく行くものではない、
必ずとんでもない師匠が起きる。
私は猛然と反対した。
彼女はきっと戻って来ると言い残して、父の部下と結婚した。
文字数 2,542
最終更新日 2020.05.13
登録日 2020.05.13
彼は本当に優しかった。
見せかけだけでなく、私の気をひくためでもなく、誠心誠意優しかった。
こんなに愛してもらっていいのだろうか、とさえ思った。
文字通り命がけで私を愛した結果、命を落とした。
彼がいなくなって、こんなに愛してくれた真の意味を知ることになった。
文字数 1,725
最終更新日 2020.05.12
登録日 2020.05.12
彼女は私と別れるために嘘をついた。
自分の命があと半年と知った時、二人にとって最もよい別れを選択したはずだった。
だが、それは間違っていた。
別れるための嘘ではなく、最後に私の元へ来るための闘う嘘をつくべきだった!
文字数 2,058
最終更新日 2020.05.11
登録日 2020.05.11
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