魚のような川は流れ、眠そうな海は静かに彼女の頬を撫でた。子供の頃の思い出は何処か夢の中と部分的に重なり、空間という輪郭が時間、もしくは虚構というそれまた時間的な虚構に溶けていくのだ。光を食べては吐き出す白い砂浜をサンダルで歩く。
文字数 1,178
最終更新日 2021.10.09
登録日 2021.10.09
耳元でカチッと音がした。何かの電源が入った、もしくは切れたのだろうと考える。この判断には根拠がない。ただそんなものを必要とせずに決めつけてもいい場合というのはそんなに珍しくもない。
文字数 1,287
最終更新日 2021.10.02
登録日 2021.10.02
僕に纏わりついた黒い流体は、窒素と酸素が組成の大部分を占めているにはあまりに粘度が高かった。大したものが入っていないこの鞄を地面にたたきつけてやろうかと思い振りかぶってみたものの、所々にある水たまりを目にして手を降ろす。僕の決死の行動は愛着のないボロボロの鞄すら濡らしたくないといった理由でどこかへ。そんなくだらない理由で。
文字数 918
最終更新日 2021.10.01
登録日 2021.10.01
僕はとても遠くへ行きたかった。だから毎日のように君は僕と港に来る。港というのは送り出す姿勢だけは立派で、どうも人を迎える気があるようには見えない。浜もない。大した店もない。コンクリートの壁や地面や空が港を訪れる人を追い出していく。
文字数 1,068
最終更新日 2021.09.30
登録日 2021.09.30
僕は幸せ者だ。広い家、赤い瑠璃唐草、そして何よりも可愛い奥さんがいる。最近は昔のようにおしゃべりではなくなったけれど、僕が主導で話をすれば必ず答えてくれた。
文字数 1,699
最終更新日 2021.09.29
登録日 2021.09.29
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私は神である。私は一つの世界を構築した。しかし神であっても世界は時間と空間で構築をする。ここでふと考える。
時間軸を固定し、空間を正の方向へ移動させることで世界を動かすことはできないだろうか。
文字数 1,969
最終更新日 2021.09.28
登録日 2021.09.28
小さな子供は純粋に見えた。僕は子供の頃純粋だったと信じていた。なぜなら僕が僕自身でしかなかったからだ。綺麗な世界だ。一色の海が広がる。滑らかな空で眠る。
文字数 803
最終更新日 2021.09.25
登録日 2021.09.25
私はずっとこのカフェにいる。私の隣に座る男性はタイムトラベラーだ。彼だけじゃない。あの人も。この人も。私だけがタイムトラベラーではない。その差異はどこにある?
文字数 1,773
最終更新日 2021.07.20
登録日 2021.07.20
僕は雨が降っているねとP子に行った。彼女は答えた。雨は降っていないと、雨が降るとは雨が止んでいるということだと。彼女が持つ数字の書かれた何かに僕は心臓から手を伸ばした。
文字数 2,009
最終更新日 2021.07.16
登録日 2021.07.16