自民比例トップ…初の漫画家国会議員赤松健氏に聞く参院選

 また「『ラブひな』を読んで受験の時に救われました!」「孤独を感じていた時、『ネギま!』のクラスメート31人に本当に救われました」と応援してくれるんです。

 私自身もまた「漫画、アニメに救われた」立場の人間です。表現の自由を守るとか、著作物を守る規制を、「本当にやっていかなくてはいけないな」との思いがますます強くなっていきました。自分自身が「実感を持っていく過程」を認識しました。

 国会議員になるまで、日本漫画家協会の常任理事表現の自由も著作権も海賊版対策も、いつでも自分の判断でやめることができました。同人活動に似ています。

しかし、今回の選挙を通じて、皆さんからの信任をいただいた責任は大きいです。全力でやり抜こうと考えています。

――漫画、アニメ、ゲームに興味はあっても政治には興味がないという人はたくさんいると思います。

赤松 “18歳選挙”になりました。若い人にイラストや動画の力を使って訴求をしていく。気付いてもらう。選挙区の候補なら、「誰が立候補している」というのはわかっているとは思うんですが、全国比例って割と漠然としているじゃないですか。

 衆議院議員選挙の比例区と参議院議員選挙の比例区の制度の違いを、若い人たちにちゃんと周知できていないケースもあると思います。衆議院では比例区の各党リストの上から順に当選します。しかし、参議院では候補者名を書いてもらい、その得票数が一番の人が受かる仕組みです。選挙戦では、まず「選挙に関する基本的なこと」を皆さんに知ってもらうことにも尽力したつもりです。

専門家・ロビイストとしての実績の高さが裏目に……

――日本の憲政史上、現役の漫画家が国会議員になることは初めてのことです。一方、比較的に古い世代の言論関係者からは「メディアに属する者や表現者、クリエイターは政治から常に一歩身を引かなければならない!」などという意見も見られます。

赤松 児童ポルノ禁止法改正案論争や著作隣接権問題、TPP締結時に浮上した「著作権法の非親告罪化」で二次創作などを除外するよう働きかけを行ったこと、海外の漫画海賊版対策の立案など、日本漫画家協会を代表して対抗し、それぞれ目標を成し遂げてきた実績があります。

 10年に及ぶ私のそうした活動を、漫画家仲間と読者が見続けてきて、「赤松のやることなら大丈夫じゃないのか」という信頼と信用を得ることができたのではないかと思っています。褒めてくれるわけではないんですが、批判もありません。何も言わないけれど、支持はしてくれていたのだと思います。

 しかし、そうした“信頼”の弊害もあって「赤松、どうせ受かるでしょう!」と、みんな言い始めたんです(笑)業界内では「赤松圧勝」という予想が大勢を占めていて、「だから他の人に入れよう」という話すら出ていました。

 しかも、「赤松ずっとやってきたから信用あるし、これからもやるよね」「落ちてもやるだろうから、あえて受からなくてもいいよね。だって今まで、できていたじゃん」という声まであったんです(笑)そのため、すごく盛り下がりました。「よもや落ちないだろう」と、みんな思っていたのです。

――各大手メディアの政治部内でやり取りされている“下馬評”でも、当初「赤松圧勝」となっていました。

赤松 前回、山田先生が50万票を獲得し、その“裏”なので、みんな「同じくらい獲るだろう」と思っていました。なおかつ、私は「100万票獲るんだ」というタグをSNSにつけていたんです。その結果、多くの人々に「じゃあ、すごいんだね」「自信もあるんだろうし、根拠もあるんだろう」と思われてしまったようです。

 6月の調査で当落線上という結果が出て、真っ青になりました。