“私が立候補していたことを知らなかったファン”が一連の投稿で気がついたようです。若い方々の中には政治ニュースに興味がなく、それまで気付かなかった方も多かったようです。イラストの投稿が拡散されていくにつれ、「あれ?赤松先生出ているんだ!」と初めて認知されるということもありました。
漫画家ならではということであれば、街宣車も好評でしたね。私の漫画のキャラクターが描かれた“痛車”です。私の顔より、私の描いたキャラクターの顔のほうが有名ですから。それを見たファンが「赤松、選挙に出ているんだ」と気付き、そこで票の掘り起こしを図ることができたと思います。
山田さんでさえ54万票に至る前にまず29万票を獲得し、少しずつ階段を上るように認知を固めていきました。いきなりのデビューで山田さんに匹敵する票数を獲得するためには、出馬に気がついてもらうという努力を、最後の最後まであきらめず行う必要がありました。
――「支持団体、組織票に一切頼らない」ことを掲げて、選挙戦を戦われました。一方で、「序盤の盛り上がりに対し、中盤に落ち込んだ」というお話もありました。『ネギま!』『ラブひな』は全世界に作品のファンがいます。しかし、ファンたちは特定の集票組織に属している訳でも、政治団体を構成しているわけでもありません。ファンであっても、必ずしも政治に関心があるわけではなく、投票してくれるかはわからないというのが実態だと思います。
一方で安倍元首相の訃報以降、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による選挙協力に関する話題が連日メディアに取り上げられています。同団体の他にも多くの議員が支持母体、集票組織のバックアップを受けています。
赤松 支持団体があるところは強いですよ。終盤戦になってぐいぐい上げてくるんです。
私は昨年12月に自民党公認候補報道があった際、「ラブひな作者」「赤松健」などのワードがTwitterのトレンドのほとんどを占めるほど話題になりました。
ところが、その後、(党公認報道時のインパクトを)抜けませんでした。知っている人は知っていて、いざ選挙が近づいてくると「みんな忘れかけている」という状況でした。いかにして、もう一回認知を上げるのか。できることなら自民党公認になった際のインパクトを超えたいと考え、ネットを活用しました。
――特に厳しかったのはいつごろだったでしょうか。
赤松 ゴールンデンウィークごろから47都道府県を回り始めました。ところが、私が北海道や沖縄を訪問すると、現地の有権者の皆さんが「なんでここにいるのかな?」と思ったみたいなんです。「(選挙に)出るらしい」という情報が先行していたのですが、どうやら「東京選挙区でしょう?」と思っていたようです。
その後、「全国比例候補らしい」という情報が伝わりはじめて、「もしかして、俺らにも関係あるのかな」となっていきました。半年かけて、「全国比例候補であること」を浸透させていくしかありませんでした。
――47都道府県すべて回ったのですか?
赤松 北海道、沖縄、四国も九州も行きました。
ありがたいことに、聴衆がゼロだったことはありません。聴衆の皆さんにサインしたり、直接話を聞いたりして触れ合いました。
皆さん、「『ラブひな』でオタクに目覚めました」とか、「『ネギま!』の声優さんがすごく好きで、『ハッピー☆マテリアル』(同アニメ版の主題歌)を今もカラオケで歌います!」とか言ってくれるわけですよ。