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恋か仕事か
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「鏡子って柳瀬さんと付き合ってんの?」
「えっ」
ある日の夕方。
仕事終わりにエリナに呼ばれて、仕事場近くのカフェに入ると。
メニューを決める前にエリナにそう聞かれた。
…そういえばそれっぽい話前に更衣室でしてたな。
でもあの時は「好きとかそういうわけじゃない」みたいなことは言ったはずだけどな。
あたしがそう思っていると、エリナが言葉を続けて言う。
「この前柳瀬さんすっごい聞いてきたよ」
「え、な、何を…?」
「明日の合コンのこと。いや表情は笑顔…笑えてはなかったけど、何?
何か、物凄い怒りを押し殺してるみたいな感じ?」
エリナはそう言うと、「今更ながらに鏡子を合コンに連れてっていいものか悩んでるよあたしは」なんて言うから。
柳瀬さんには合コンのことは言ってなかったのに、なんで知ってるの!?
そこにびっくりしたあたしは、思わず目を丸くして言った。
「な、何で柳瀬さんが合コンのこと知ってんの!?」
「んー、なんかバイトの舟木くんが明日の夜勤入れなくなっちゃって、柳瀬さんがあたしに入れるかきいてきたから、つい」
「!」
そしてエリナは、「で、付き合ってんの?」と。あたしに再度聞いてくるから。
…付き合っては、ない。ないんだけど。半分同棲…同居?してるっていうか、ここずっと自分のマンションに帰ってないっていうか。
だけどまさかそんなことはさすがのエリナにも言えるはずもなく、
「付き合ってないし。言ったじゃん、この前」
と、あたしはメニューに視線を落として言う。
「…あ、あたしオレンジジュースにする」
「…」
「エリナは?」
「…カフェオレ」
「ん、じゃあ店員さん呼ぶね」
そう言って、呼び出しボタンを押して、とりあえず飲み物をオーダーする。
しかしオーダーした後、やがてエリナが言った。
「…でも、柳瀬さんと二人で飲みに行ったんだよね?」
「い、行ったけど。でもほら、それはあたしが柳瀬さんのスーツにコーヒーこぼしちゃったからそのお詫びで、」
「じゃあ飲みに行ったのは一回だけなんだ?」
「ん…んん?うん、まぁね」
「…」
あたしはエリナの問いかけに頷くと、とりあえず何か話逸らさなきゃ、と思わずあたりを見渡す。
だけど鋭いエリナはそんなあたしを疑っているようで、言った。
「じゃあ、鏡子は柳瀬さんのことどう思ってんの?」
「え、どうしたの突然」
「突然じゃないでしょ。自然な流れでしょ。で、どうなの?好きなの?」
「そりゃあ上司として尊敬してるよ」
「…好き?」
「うん」
その問いかけに頷いた直後、「もちろん上司としてね」と付け加える。
しかし…
「…わかった!」
次の瞬間、納得したようにエリナが言った。
そんなエリナにあたしは内心ほっとして、エリナに言う。
「わかってくれた?」
「うん。つまり、柳瀬さんは鏡子を好きな感じはバリバリ見せてるけど、鏡子はそうでもないわけだ?」
「…えっ」
「うーん。だったら、あたしから今度柳瀬さんに言っといてあげる」
「な、何て?」
「『すみませんけど、鏡子は柳瀬さんのことは好きじゃないので、鏡子のことは諦めて下さい』って」
「!!」
エリナはそう言うと、「そう言われたら柳瀬さんだって身を引くでしょ?」なんて言うから。
「お待たせ致しました。オレンジジュースで、」
あたしはいてもたってもいられなくて、思わず大きな声で言ってしまった。
「だめ!!」
「!」
そう言って、思わず目の前のテーブルを、バン、と。
あたしが叩くと、目の前のエリナが少し驚いたように少し目を丸くする。
そして気が付けば、女の店員さんが、あたしのオレンジジュースを運んできてくれていて…。
「あ…」
「…」
「す…すみません」
あたしはそう言うと、少し恥ずかしく思いながら店員さんからオレンジジュースを受け取る。
「か、カフェオレもう少々お待ちくださいっ」
すると店員さんはエリナにそう言うと、逃げるようにその場を後にしてしまった。
や、やってしまった…思わず…。こんなことめったにないのに。だってエリナがあんなこと言うから!
それでもあたしが気まずさいっぱいでオレンジジュースに手をのばすと、向かいでエリナがちょっと笑って言った。
「どしたの。鏡子らしくないね」
「や…ごめん。つい」
「わかった。じゃあ柳瀬さんには言わないよ。見守っててあげる」
「うん。いやまぁ…付き合ってはないし、そうなるとも限らないけど」
「いやいや隠さなくっても、あたしは全然ありだと思うよ~」
柳瀬さんハイスペックだから広喜くんと別れて正解だったじゃん。
あたしの言葉にエリナはそう言うと、「付き合いだしたら教えてね」なんて言うから。
何だかまた恥ずかしくなったあたしは、その言葉に返事はしないでおいた。
…あたし、もしかして柳瀬さんのこと…好きなのかな。
好きだったら、今日もあのマンションに帰る予定なのに、どんな顔して会ったらいいの…。
「…で、鏡子って明日の合コンほんとに行くの?」
「だって夏木さんがせっかくセッティングしてくれたし」
「だよね…」
「でもほら、あたしはとりあえず参加するだけだから」
「(柳瀬さんには鏡子のための合コンって言ってあるんだよなー)」
あたしはエリナの不安はつゆ知らず、ふいに店内の時計に目をやった。
…19時。会社のおもちゃ屋が閉店したぐらいだな…。
…………
閉店後。今日も開店から閉店までのオール勤務だった俺は、夏木ちゃんと一緒に閉店作業をしていた。
「夏木ちゃん、そこ閉めたら帰っていいから」
「はい、」
…店長の忙しさはエグい。
休みの日でも勉強会とか会議とかかぶせてくるし、まともな休みなんて一体月に何日あんだってくらい。
俺は店内を後にすると、そのままの足で店の裏口に出た。
外に続くドアを開けると、そこには一人の「ある女性」が立っていた…。
「えっ」
ある日の夕方。
仕事終わりにエリナに呼ばれて、仕事場近くのカフェに入ると。
メニューを決める前にエリナにそう聞かれた。
…そういえばそれっぽい話前に更衣室でしてたな。
でもあの時は「好きとかそういうわけじゃない」みたいなことは言ったはずだけどな。
あたしがそう思っていると、エリナが言葉を続けて言う。
「この前柳瀬さんすっごい聞いてきたよ」
「え、な、何を…?」
「明日の合コンのこと。いや表情は笑顔…笑えてはなかったけど、何?
何か、物凄い怒りを押し殺してるみたいな感じ?」
エリナはそう言うと、「今更ながらに鏡子を合コンに連れてっていいものか悩んでるよあたしは」なんて言うから。
柳瀬さんには合コンのことは言ってなかったのに、なんで知ってるの!?
そこにびっくりしたあたしは、思わず目を丸くして言った。
「な、何で柳瀬さんが合コンのこと知ってんの!?」
「んー、なんかバイトの舟木くんが明日の夜勤入れなくなっちゃって、柳瀬さんがあたしに入れるかきいてきたから、つい」
「!」
そしてエリナは、「で、付き合ってんの?」と。あたしに再度聞いてくるから。
…付き合っては、ない。ないんだけど。半分同棲…同居?してるっていうか、ここずっと自分のマンションに帰ってないっていうか。
だけどまさかそんなことはさすがのエリナにも言えるはずもなく、
「付き合ってないし。言ったじゃん、この前」
と、あたしはメニューに視線を落として言う。
「…あ、あたしオレンジジュースにする」
「…」
「エリナは?」
「…カフェオレ」
「ん、じゃあ店員さん呼ぶね」
そう言って、呼び出しボタンを押して、とりあえず飲み物をオーダーする。
しかしオーダーした後、やがてエリナが言った。
「…でも、柳瀬さんと二人で飲みに行ったんだよね?」
「い、行ったけど。でもほら、それはあたしが柳瀬さんのスーツにコーヒーこぼしちゃったからそのお詫びで、」
「じゃあ飲みに行ったのは一回だけなんだ?」
「ん…んん?うん、まぁね」
「…」
あたしはエリナの問いかけに頷くと、とりあえず何か話逸らさなきゃ、と思わずあたりを見渡す。
だけど鋭いエリナはそんなあたしを疑っているようで、言った。
「じゃあ、鏡子は柳瀬さんのことどう思ってんの?」
「え、どうしたの突然」
「突然じゃないでしょ。自然な流れでしょ。で、どうなの?好きなの?」
「そりゃあ上司として尊敬してるよ」
「…好き?」
「うん」
その問いかけに頷いた直後、「もちろん上司としてね」と付け加える。
しかし…
「…わかった!」
次の瞬間、納得したようにエリナが言った。
そんなエリナにあたしは内心ほっとして、エリナに言う。
「わかってくれた?」
「うん。つまり、柳瀬さんは鏡子を好きな感じはバリバリ見せてるけど、鏡子はそうでもないわけだ?」
「…えっ」
「うーん。だったら、あたしから今度柳瀬さんに言っといてあげる」
「な、何て?」
「『すみませんけど、鏡子は柳瀬さんのことは好きじゃないので、鏡子のことは諦めて下さい』って」
「!!」
エリナはそう言うと、「そう言われたら柳瀬さんだって身を引くでしょ?」なんて言うから。
「お待たせ致しました。オレンジジュースで、」
あたしはいてもたってもいられなくて、思わず大きな声で言ってしまった。
「だめ!!」
「!」
そう言って、思わず目の前のテーブルを、バン、と。
あたしが叩くと、目の前のエリナが少し驚いたように少し目を丸くする。
そして気が付けば、女の店員さんが、あたしのオレンジジュースを運んできてくれていて…。
「あ…」
「…」
「す…すみません」
あたしはそう言うと、少し恥ずかしく思いながら店員さんからオレンジジュースを受け取る。
「か、カフェオレもう少々お待ちくださいっ」
すると店員さんはエリナにそう言うと、逃げるようにその場を後にしてしまった。
や、やってしまった…思わず…。こんなことめったにないのに。だってエリナがあんなこと言うから!
それでもあたしが気まずさいっぱいでオレンジジュースに手をのばすと、向かいでエリナがちょっと笑って言った。
「どしたの。鏡子らしくないね」
「や…ごめん。つい」
「わかった。じゃあ柳瀬さんには言わないよ。見守っててあげる」
「うん。いやまぁ…付き合ってはないし、そうなるとも限らないけど」
「いやいや隠さなくっても、あたしは全然ありだと思うよ~」
柳瀬さんハイスペックだから広喜くんと別れて正解だったじゃん。
あたしの言葉にエリナはそう言うと、「付き合いだしたら教えてね」なんて言うから。
何だかまた恥ずかしくなったあたしは、その言葉に返事はしないでおいた。
…あたし、もしかして柳瀬さんのこと…好きなのかな。
好きだったら、今日もあのマンションに帰る予定なのに、どんな顔して会ったらいいの…。
「…で、鏡子って明日の合コンほんとに行くの?」
「だって夏木さんがせっかくセッティングしてくれたし」
「だよね…」
「でもほら、あたしはとりあえず参加するだけだから」
「(柳瀬さんには鏡子のための合コンって言ってあるんだよなー)」
あたしはエリナの不安はつゆ知らず、ふいに店内の時計に目をやった。
…19時。会社のおもちゃ屋が閉店したぐらいだな…。
…………
閉店後。今日も開店から閉店までのオール勤務だった俺は、夏木ちゃんと一緒に閉店作業をしていた。
「夏木ちゃん、そこ閉めたら帰っていいから」
「はい、」
…店長の忙しさはエグい。
休みの日でも勉強会とか会議とかかぶせてくるし、まともな休みなんて一体月に何日あんだってくらい。
俺は店内を後にすると、そのままの足で店の裏口に出た。
外に続くドアを開けると、そこには一人の「ある女性」が立っていた…。
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