楽天G、資金繰り悪化懸念、迫る8千億円の社債償還…収益源の金融事業を手放す

楽天市場の発展のためにポイント事業を戦略的に活用することが困難に

 その資金繰り対策として取り沙汰されているのが楽天カードの上場だ。10日、楽天Gは楽天ペイ事業と楽天ポイント事業を連結子会社の楽天ペイメントに移管したうえで、楽天ペイメントを楽天カードの傘下に入れると発表。決済サービスとポイントサービス、金融サービスを一体運営していくことになるが、楽天カードを上場させて社債返還の原資にあてるのではという観測が広まっているのだ。会見で三木谷社長は上場の可能性について「資本について今のところ予定はありませんが、今後の状況を見て柔軟に考えていきたい」「(事業として)かなり大きくなってきたので、いろいろなことが考えられると思っています」と含みを持たせた。

「楽天カードの傘下に楽天ペイ事業と楽天ポイント事業を集約するという機構改革の発表は、楽天の株主にとっては本当に悪いニュースで、楽天カードの上場計画が水面下で進んでいることを示しています。三木谷社長が『柔軟に考えていく』と発言しているのは、その計画を受け入れ始めたという意味だと私は捉えました。すでに上場した楽天銀行や、上場計画が進んでいる楽天証券と違い、楽天カードと楽天ポイント、そして将来性があるキャッシュレスの楽天ペイは楽天グループのビジネスモデルの中核を担う機能です。

 この新しい楽天カードはグループにとって楽天市場と二本柱になる収益事業です。なかでも楽天ポイントを楽天カードが握るということは、これまでのように楽天市場の発展のためにポイント事業を戦略的に活用することが難しくなります。そう考えると今回の機構改革は楽天グループにデメリットしかないのですが、重要なことは、なぜそれを実行したのかということです。

 理由は間違いなく資金繰りです。すでに金融機関からこれ以上お金を貸せないというメッセージを突き付けられているのでしょう。そうなると一番儲かるビジネスを切り売りするしかなくなります。今回、楽天カードに収益性と成長性どちらも機能を集約したことは、その上場益で楽天Gの有利子負債負担を軽減するという後ろ向きのメリットを追った決断であり、それは本質的には楽天Gにとっては前向きなメリットとはいえないのです」(鈴木氏)

(文=Business Journal編集部)