「家族」というチームのつくり方

「どれだけ家事をしても感謝されない…」評価されない夫がすべきたった一つのこと

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うまくいっていない家庭は、マネジメントが利いていない

ビジネスにおいてマネジメントが重要であることは、もはや当たり前の共通認識になっているのではないでしょうか。

家庭においても、マネジメントは重要です。
奥さんのメンタルもマネジメントするべきですし、家事は誰がどう行うのかもマネジメントすべきです。家庭内の父親としての役割もセルフマネジメントすべきでしょう。また、子育てもマネジメントが大変有効な領域です。
マネジメントが機能していなければ、家庭は少しずつほころんでいき、やがて崩壊してしまいます。
家庭でもビジネスでもマネジメントはきわめて重要なのですが、一方で、「マネジメントとは何か」と問われると、答えに詰まる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私は組織開発コンサルタントとして、ビジネス領域においてたくさんの組織を見てきましたが、優秀なビジネスパーソンであったとしても、マネジメントを的確に理解している人はまれでした。
また、マネジメントを難しく考えすぎている人が多いようにも感じています。
これを機会に、マネジメントをシンプルにとらえ直してみて、家庭でもビジネスでも活かしていきましょう。

シンプルなマネジメントの定義

マネジメントとは何のことでしょうか?
日本語に訳せば、「管理」です。部署の管理、業務管理、原価管理、人件費管理、人員管理、人材育成管理、リスク管理等、様々な場面で「管理」という言葉は使われます。

このように、日常的に使われる一方で難しい印象のある、管理やマネジメントという言葉ですが、シンプルな理解の仕方があると考えています。それは、あるマネジメントサイクルを理解することです。
そのマネジメントサイクルとは、ビジネスの業界ではもっとも有名とも言える、あのサイクルのことです。
そうです。PDCAサイクルです。
PDCAサイクルは、マネジメントの根幹を成す、マネジメントサイクルの一種なのです。

「マネジメントとは、PDCAサイクルを回してスパイラルアップさせること」

これが、マネジメントのもっともシンプルな理解の仕方だと、私は考えています。

PDCAサイクルは、その認知度の高さとは裏腹に、実際にできているかと問われると、できていないことのほうが多いのが実情でしょう。
それではここで、PDCAサイクルをしっかりと知っている人でも、「できているか?」という観点でもう一度、本質的な意味を理解し直しましょう。

PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(検証)→Action(改善)の4つのサイクルのことです。4つのサイクルの頭文字を取ってPDCAサイクルと言い、これをグルグル回して、スパイラルアップさせていき、物事をよりよくしていきます。

たとえば、ダイエット=体重管理をしようと思い立ったとします。
その場合まず、やせる計画(P)を立てて、実際にその計画を実行(D)します。りんごダイエットで、りんごしか食べないぞ、と計画して実行しようとしたところ、計画通りに実行できなかったとしましょう。
体重計に乗り、行動を振り返る(C)と、計画も良くなかったし、実行もできなかったので、体重が減っていないということがわかりました。
そこで、改善策(A)を考え、計画を修正します(Pの2回目)。これにより、より実行可能であり、成果の上がる計画になれば、実行度が上がって体重が減り始める、といった具合です。

どんな物事であってもうまく活かそうと思うのであれば、このサイクルは必須です。もちろん、組織をマネジメントする際においても必須で、このサイクルがもっとも重要だと考えています。

売上管理なら、売上をどう上げるかの計画(P)を立て、それを実行(D)し、成果が出たのかの結果を踏まえて計画と実行を検証(C)します。そこで、より成果の上がる計画へと改善(A)するわけです。

成果を出す人であれば、意識的であれ無意識であれ、必ずやっているのがこのPDCAサイクルです。
なお、1人で仕事が完結できるプレイヤーであれば、このPDCAを誰かに伝えたり、明確にする必要がないので、その場の思いつきや場当たり的な対応でわりと成果が出たりします。
しかし、プレイヤーとして仕事で成果を出して、管理職(マネージャー)になると、そうはいきません。部下ができたり、他部署との連携が必要になったときに、自分がなんとなくやっていたPDCAが言語化できていないと、人を自分のPDCAサイクルの中に巻き込むことができず、結局すべて自分でやってしまうことになってしまうのです。
したがって、PDCAサイクルを明確にし、他の人にも共有できるものにしておくことは、プレイヤーがマネージャーに昇格するタイミングや、複数のメンバーで仕事を進めるときに、特に重要性が高まることになります。

よくいるマネジメントができていないマネージャーの特徴


【ダメマネジメントの典型的な4タイプ】
①    D→D→D→Dサイクル
②    P→D→P→Dサイクル
③    P倒れ
④    Cのみマネージャー

①    D→D→D→Dサイクル

計画(P)を立てたりすることが苦手で、とりあえず実行(D)だけするという状態です。プレイヤーとしては優秀で、行動力にあふれる人が多いです。計画で悩んでいる暇があれば秒で動け、というのは、ある意味ではとても正しく、成果を上げるのですが、周りを巻き込めず、プレイヤーから脱却できないのはこの状況に陥っていることが多いです。

②    P→D→P→Dサイクル

計画(P)を立てて実行(D)するのですが、振り返りや検証(C)を行わないので、毎回同じようなところでつまずきます。毎年恒例のイベント企画をするのに、その記録もしていなければ、振り返りもしないので、毎年「去年何やったっけ?」と思い出せず、結局同じ過ちを繰り返す状況です。

③    P倒れ

年初に目標を立てたり、半年に1回計画を立てるのですが、計画(P)を立てたことに満足してしまって、実行(D)さえできないパターンです。

④    Cのみマネージャー

計画(P)にも実行(D)にも関与せずに結果だけ見て「成果が出てないじゃないか! どうなっているんだ」とチェック(C)だけするという、部下から非常に嫌われやすい状況です。

さあ、いかがでしょうか。
ダメマネジメントの典型例に陥っているものがどのくらいありましたでしょうか?
PDCAサイクルという大変有名なモデルにもかかわらず、P→D→C→Aをグルグル回すことは、意外とできていないことが多いのではないでしょうか。

管理職の実力の違いは、ここで出ます。
マネジメントができない人は、わりとずっとできない傾向が強くて、一旦できるようになると、あっという間にレベルが上がります。しっかりと理解して、1つ1つ丁寧にやっていくと、確実に上達するのです。

ビジネスにおいて、マネジメントがうまくいっていない人は、この機会に見直してみるとよいと思います。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

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高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...
その仕事、部下に任せなさい。

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