そこまでして楽天Gが携帯電話事業にこだわる理由は何か。
「会見で三木谷会長は、楽天モバイルの契約者は楽天市場での購入率が約60%、楽天トラベルは約100%上昇すると強調していることからもわかるとおり、楽天Gが展開する各種サービスの利用者囲い込みと利用機会のアップが狙いだろう。11月に発表されたSPU(スーパーポイントアッププログラム)の改定では、楽天モバイル契約者がポイント還元面でさまざまな優遇を受けるかたちになっているが、これもその一環だ。この戦略で要になってくるのが楽天ポイントなどの金融サービスだが、携帯事業の資金獲得のために金融事業会社を上場などさせることによって、それらを楽天グループとして自由かつ機敏にハンドリングできなくなってしまえば本末転倒だ。そこに楽天Gの経営の危うさを感じる」(別の金融業界関係者)
当サイトは8月13日付記事『楽天G、資金繰り行き詰まり懸念…銀行が追加融資に難色か、楽天カード上場は最悪』で楽天Gの経営について掘り下げていたが、以下に改めて再掲載する。
――以下、再掲載――
楽天グループは10日、2023年1~6月期の連結決算(国際会計基準)を発表。営業損益は1250億円の赤字(前年同期は1987億円の赤字)、最終損益は1399億円の赤字(同1778億円の赤字)となり、携帯電話事業の巨額の赤字(1850億円)がEC事業や金融事業などの利益を食いつぶす構図が改めて鮮明に。楽天Gは携帯事業の基地局整備などの設備投資のために発行した大量の社債の償還を23年以降に控えており、その額は25年までに約8000億円。市場では資金繰り行き詰まりへの懸念も浮上するなど、経営の行方が注視されている。楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は同日の会見で「財務的にはもう間もなく、グループ全体で黒字化というのも復活します」「楽天Gの収益構造の向上もすごいスピードで始まっています」と語り強気の姿勢をみせているが、三木谷社長がいうように同社が近いうちに黒字に転じる可能性はあるのか。もしくは、単独での存続が困難になるというシナリオは考えられるのか。専門家に聞いた。
楽天Gの目下の経営課題は、なんといっても携帯事業だ。20年に子会社の楽天モバイルを通じて携帯電話事業のサービスを開始。どれだけ使っても月額で最大で税込み3278円(楽天回線エリアのみ/通話料等別)、さらに月間データ利用量が1GB以下なら基本料無料というプランを掲げ、翌21年には500万回線を突破したものの、昨年には1GB以下の0円プランを終了した影響で契約数が減少した。
そうした状況に楽天モバイルは手をこまねいていたわけではない。従来の「Rakuten UN-LIMIT VII」は、月間データ利用量3GBまでは月額1078円、同3GB~20GBまでは月額2178円、データ使い放題は月額3278円であり、専用アプリ「Rakuten Link」を使用すれば音声通話とSMSは無料。ただ、データ利用量については、KDDIのパートナー回線によるauローミングサービス利用時の高速通信は月間5GBに制限されており、制限を超えると通信速度が1Mbpsに制限されていた。そこで6月1日からは「最強プラン」の提供を開始し、現行の料金体系を維持しつつ、auローミングの制限を撤廃。
新プランの影響もあってか、今年6月時点の楽天モバイル(MNOの個人+法人)の回線数は、前四半期から24万増の481万と右肩上がりのトレンドを維持しており、会見で三木谷社長は「近いうちに500万回線を実現できる」と自信を示している。