楽天G、資金繰り悪化懸念、迫る8千億円の社債償還…収益源の金融事業を手放す

 三木谷社長の自信を裏付けるかのように、携帯事業は引き続き巨額の赤字が続くものの、同事業の営業損益ベースの赤字幅は、前年同期の2538億円から1850億円へ縮小。楽天G全体でも営業損失は前年同期の1987億円から1250億円へ縮小しており、改善の方向に向かっていることは確かなようだ。

「楽天Gは携帯事業の設備投資に当初計画の6000億円を上回る計1兆円を投入してきたが、基地局整備が一巡し、今後はがくっとその費用は減る。同社的には年内にも単月黒字化を実現すると踏んでいるが、一気に大きく黒字に転換するとは考えにくい。その一方で多額の社債返還がのしかかってくるため、綱渡りの状態が続くのは間違いない」(市場関係者)

 楽天Gの黒字化の可能性について、経営戦略コンサルタントで百年コンサルティング代表取締役の鈴木貴博氏はいう。

「楽天Gは前回の決算発表で、携帯電話事業の赤字を生み出している基地局などの投資について金額を大幅に見直すことによって赤字幅を縮小すると説明していました。今回の決算ではその公約を着実に果たした結果が出ました。その観点で比較的良い決算だったと私は認識しています。事業自体の結果を見るためには営業損益を見ると実態がわかりやすいです。前四半期の営業損失は762億円のマイナスだったのですが、今四半期は489億円のマイナスと大幅に赤字が減っています。1年前の同じ時期と比較すると367億円の収益改善です。公約通りの結果が出てきていることは評価すべきでしょう。

 しかし本当に気にすべきは、ここからいつ黒字に持っていけるかです。四半期で黒字になれば、それ以上損失が出ないので投資家や銀行の心配も止まることになります。その視点で考えると今期の収益改善は投資方針を変更した結果のコストの縮小に基づいたものなので、そのままでは今後とも同じようなレベルの赤字が続くことになります。

 ここから489億円の営業赤字をゼロに持っていくためには、携帯事業でそれを埋められるだけの収益が上がる必要があります。その際、楽天モバイルのプランではARPU(一ユーザー当たり・一カ月当たりの料金収入)をこれ以上上げるのは難しいため、増収には会員数がどれだけ増えるかがポイントとなります。単純計算で四半期で売上を489億円増やすためには、携帯会員が780万人増える必要があります。楽天モバイルはこの半年で会員数を36万人増やし、直近の1カ月でも10万人会員を増やしています。堅調な増加傾向ではあるのですが、年間120万人増ペースですから、黒字化には6年以上かかる計算です。つまり現在の延長では楽天Gの黒字化は難しい状況です。一方で楽天経済圏には4000万人のユーザーがいますから『風が吹けば悪い流れが変わる可能性はある』わけで、三木谷さんもその風を起こそうと必死なのです」

楽天Gの高収益事業を手に入れようと考える投資家や金融機関が出現するリスク

 前述のとおり楽天Gは多額の社債返還が迫るなど、資金繰りに行き詰まるリスクも指摘されているが、楽天Gの資金繰り悪化が深刻化して単独での存続が困難になる可能性はあるのか。

「ここが楽天Gの最大のリスクです。存続できるかどうかはメインバンクをはじめとする銀行団の胸先三寸といった状況です。銀行の立場で考えても黒字化に6年かかるというのでは、経済状況によっては追加融資どころか借換えの要請にも難色を示している可能性はあります。直近では米ドルでの借入金が増加しているようで、これは要するに国内の金融機関は支援に二の足を踏み始めていることを示しています。後述する楽天カード上場の話とも関係しますが、この機会に楽天Gの高収益事業を手に入れようと考える投資家や金融機関が出現するリスクも十分に考えられます。楽天解体が始まれば、それは楽天Gにとって悪いシナリオが現実化していく兆候です」(鈴木氏)