ただ、現状では、エネルギー問題や自国産業の将来性などについて、今の政府にそこまでの“覚悟”や“心構え”“戦略”といったものを感じることはできない。その部分の欠如が、日本車のゼロエミッション化を遅らせていることに大きく影響しているのは間違いないだろう。BEVを普及が叫ばれる時に“走行距離課税”といった案が出てくるなんて、信じられない話である。
現状では、日本国内でBEVが増えてもCO2は火力発電所で排出され続けるのである。“ガソリン代より電気代の方が安い”“給油に行く面倒がなくなる”というだけでは、BEVなどゼロエミッション車に注目が集まったとしても、広く乗り替えてもらうのはなかなか厳しいだろう。
繰り返すが、サクラの登場でBEVが注目されたという点では、その功績は大きいし、否定するつもりはない。しかし、日本国内で再生可能エネルギーインフラをもっと拡充させ、カリフォルニアのように補助金などに厚みを持たせ、戸建て住宅の多くにBEVがなくともとりあえず充電施設を設置させるなど、BEVを迎え入れる準備がもっとできていたのならば、サクラはもっと注目されていただろうと思うと残念で仕方ない。それでもサクラが一定の注目を浴びる中で、BEVにまつわるさまざまな課題が筆者の頭の中でかけめぐってしまった。