EVでも日本車はガラパゴス化?日産「サクラ」で見えた課題、欧州の日本車潰しとは

 世界的にインフレが深刻な問題となっている中、日本もインフレがひどくなっているとはいうものの、世界に比べると街じゅうがバーゲンセール中のように物価が安く見えるようだ。軽自動車規格BEVがバーゲンプライスとはいわないが、たとえば同じ日産の「アリア」に比べれば、はるかに割安に感じるだろう。

 しかし、BEVでは日本車よりも輸入車の方がライバルとして気になる存在となりそうだ。すでに、韓国の現代自動車(ヒョンデ)がFCEV(燃料電池車)とBEVで乗用車販売を日本国内で再開させている。さらに、それまで乗用車の日本国内での販売は考えていないとしていた中国の比亜迪(BYD)が、2023年から乗用BEVの国内販売を開始すると発表した。

 日本よりも“BEV先進国”である中国の自動車メーカーの中でも、BEVで突出しているBYDは、そもそも電池メーカーなので、車載電池からトータルでの車両開発も可能となっている。目立つ安売りはしないだろうが、中国の企業なので、その戦略には中国政府が何らかの関与をしている可能性は高く、“奇策”ともいえる驚くべき販売促進活動を展開してくることは十分考えられる。

 BYDの発売予定3台の中で、仮にコンパクトハッチバックタイプのモデルがサクラ並みの価格設定となった時、軽自動車規格BEVにとってはかなりのコンペティターになることは間違いないだろう。もちろん、“中国車”に対する世間のネガティブなイメージは無視できないが、日本の主要マスコミの時代錯誤的な“偏向報道”も十分警戒し、対策を打ってくるだろう。

 中長期的に見れば、BYDに続けとばかり、中国メーカーが日本市場に続々BEVを持って上陸してくる可能性も十分考えられる。若い世代は生まれた時から日本製より韓国や中国、タイ、ベトナム製などの工業製品に囲まれているので、日本製かどうかはもちろん、日本のブランドだから“クール”といったことも強く感じないだろう(中国ブランドだからと極端にネガにも思わないはずだ)。次の世代の消費者を囲い込むためにも、今が勝負時と考えている可能性は十分ある。

“輸入車ではメンテナンスが……”と気にする声もあるだろう。しかし、ICE搭載車に比べるとBEVは圧倒的に部品点数が少なく、故障もしにくいとされている。すでにICE搭載車のメンテナンス現場でも、エンジンにチェッカーをつなげて診断し、不具合箇所が出てきたら部品交換を行うといった流れの作業がメインになっている。

 新車の販売現場からは「オイル交換はいらなくなりますし、アフターサービス業務での利益はBEVの普及とともに急減していくでしょう。それでもタイヤは残りますし、物販で食いつなぐしかないですね」という話も聞けた。

 新車販売から得る利益などは期待できなくなって久しい。オンライン商談の普及も手伝い、BEVの普及は日系メーカーの新車販売拠点の再編、つまり統廃合を加速させるだろう。そうなると、輸入車でよく懸念されるアフターサービスへの不安も、日系メーカー系ディーラーと大差なくなる日が来るのもそう遠くないと見ることもできる。

日本の電力供給の8割が火力発電という課題

 サクラで日本国内でもBEVへの注目は高まったが、課題は日本の電力供給の約8割が火力発電という現状だ。日産系ディーラーへ行っても、ディーラー手作りのサクラの販売促進用資料を見ると、一定期間内におけるICE軽自動車のガソリン代とサクラの電気代の負担の違いや、“給油へ行く手間がない”といったアピールが目立つ。現状の電力供給状況を考えると、とてもではないが“地球にやさしい”といったアプローチはできない。