(※2021年6月28日時点 1ユーロ=約132円で計算)
となっています。
日本での紙を活用した現行の投票制度では、2019年の参議院選挙における執行経費が570億9600万円、2017年の衆議院選挙における執行経費が619億7158万5000円となっており、最高裁判所裁判官の国民審査に要する経費及び臨時啓発費を加えた総額が1202億7970万7000円。仮に、5割の経費を削減できたとしたら、衆参合わせた国政選挙一回あたりの総額で約600億円程度削減することができます。
想定では、インターネット投票のシステム構築を行うにあたっては、30~50億円程度、選挙人名簿管理システムの標準化・改修費などで30~50億円、システム維持費は年間およそ10億円 、セキュリティ対策費はおよそ5~10億円の費用がかかると推計しています。
インターネット投票の利用者が増え、投票所の利用者が減るにつれ、人件費や事務費用を節減することができますので、より人員が必要な箇所にリソースを配分することが可能になると考えています。
――外国の事例について。すべての選挙でインターネット投票を導入しているのは、エストニアだけとされています。韓国、台湾、アメリカなどで、インターネット投票の導入が進まないのは、なぜなのでしょうか?
各国で技術力や選挙制度が大きく異なるので、エストニアでできたからといって他国でも即座に適用できるわけではありません。ノルウェーやフランスでは、一部の選挙においてインターネット投票導入したものの、最近の選挙においては、サイバーセキュリティ上の脅威が高まっているとして中止しました。それぞれの制度に応じたカスタマイズが必要になりますので、決裁権者の技術的な理解も含めて時間がかかっているというのが、私の認識です。
また、技術的な理由以外にも、政府への信頼などに関する国民感情や、文化的な価値判断のなかで実施しないなど、さまざまな理由があると考えています。例えば、韓国では、ブロックチェーンを活用したインターネット投票システムがすでに開発されている現状がありますが、政府への信用という側面でのハードルが高く、日本と同じように政府に懐疑的な思いを持っている人々が多くいる現状があります。
韓国では、そうした現状を克服するために、インターネット投票システムを町内会の選挙など民間に貸出を行い、使ってもらうことで信頼醸成を試みていると伺いました。また台湾では、中国大陸在住の台湾人が多く、中国による操作の懸念が拭えないため在外投票における不在者投票や郵便投票がそもそも認められておらず、ネット投票もこれらに準じて行われていません。そして、エストニアでも価値判断として、婚姻届や離婚届はデジタル化しないこととしていますが、台湾でも投票は紙でするものという文化も根強いとのことです。
さらには米国では多くの州で軍人や国外居住者におけるインターネット、eメール、FAXによる投票が認められてます。なかでもアメリカのアラスカ州では、希望するすべての人がインターネットを利用した簡易的な仕組みでの投票を行うことができます。
――エストニアでは、どのような効果がありましたか?
国政選挙の投票率が2003年に58.24%だったのが、05年にインターネット投票が始まってから、現在まで上昇を続けています。19年は63.81%と約5ポイントも上昇しました。年代別では高齢者の投票率が上がっています。
インターネット投票は、若者のための政策と錯覚されがちですが、投票に行きたいと思っているのに、体調不良や地理的な要件で投票することができなかった高齢者の活用が進みました。セキュリティ面をはじめ、まだ導入には乗り越えていかなければならないさまざまな課題があるが、今回のプログラム法では、それらの論点を網羅的に包括した内容の法案となっています。