郵送と併用した仕組みなら、例えば、システムにアクセスして住所・氏名・生年月日などの確認が完了している端末からのみ投票できるようにし、郵便で届いたパスフレーズと自分しか知らない予め届出をしているパスワードを入力するという仕組みも考えられます。
――インターネット投票は投票所に行かずに投票をすることができるため、「なりすまし投票(詐偽投票)」が容易になる可能性があります。なりすまし投票を防止するための本人確認の確実な実施等について、具体的にどのような方策を検討してらっしゃいますか?
デジタル署名やそれに相当する認証方法を用います。インターネット投票が導入されてる他国でもデジタル署名が破られたという事例は現在までありません。大事なのは、デジタル署名された記録が不正に抹消されたり、捏造されたりしていないことの証明であり、ブロックチェーン技術により公平性、透明性の担保をできると考えています。
罰則については、現在も詐偽投票は公職選挙法違反として2年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科せられます。詐偽投票を依頼するなど違反行為を強要、ほう助した人も厳罰が下るほか、投票干渉も1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金です。立法事実が積み重なるようなら、さらに罰則を強化することも検討できると思いますし、映画の冒頭に放映される「NO MORE 映画泥棒」のCMのように、それが明確な犯罪であるということを投票前の画面で啓発し、抑止することも一案として考えられます。
――インターネット投票では投票者と投票内容が紐づけされた状況で第三者へ流出することが懸念されるが、「投票の秘密」の確保を実現するために、投票データの管理方法はどのように考えていらっしゃいますか?
本人以外は誰に投票したか、わからないシステムで設計することが重要だと思っています。例えば、誰が投票を行える人、行った人であるのかという選挙人管理データと、誰に投票したのかという投票データ管理のシステムを切り分け、両方のデータを暗号化し、各政党から選ばれた立会人や選挙管理委員などで複数に暗号鍵を分散管理し、それが全体で一致しなければ暗号鍵を開けることができないようにするなど、技術と制度で投票の秘密を確保します。また、誰が誰に投票したかという情報を確認することを禁止する条項を定め、政府や各地方自治体が投票の秘密を守らなければならない制度とします。
――マルウェアなどをシステムに仕込まれた際の対応は?
技術は日進月歩なので、あらゆる仕組みにおいて100%のセキュリティはどのシステムでもできませんが、しっかりとしたコストをかけて対策し、常にチェックを繰り返していきます。また、データの分散管理によるバックアップや、不正ログの検証を行うことにより、適正に管理する体制を整えます。
――どのくらいのコスト削減効果が見込めますか?
民主主義の根幹である選挙にかかる費用を削減することを主目的とするものではありませんが、エストニアでは、インターネット投票を行う人の比率が4割となり、経費は6割減ったといわれています。2018年にタリン工科大学の4人の研究者によって発表された論文では、2017年の地方選挙における投票方法ごとの1票あたりコストが計算されています。 彼らの計算によると1票あたりのコストは、
・インターネット投票で2.32ユーロ(約306円)
・投票所における期日前の投票で20.41ユーロ(約2694円)
・投票所における投票日の投票で4.37ユーロ(約576円)