トランプ一家、米大統領選敗北なら“監獄行き”の可能性も…脱税、ロシアと共謀し選挙介入

ロシアと中国が描く未来図

 いずれにせよ、トランプ大統領は必死である。なぜなら、ホワイトハウスを去れば、韓国と同じで、お縄になるという大統領の運命が待っていると自覚しているからであろう。マンハッタンの地方検事局ではトランプ一家の脱税疑惑やドイツ銀行を巻き込んでの不正融資問題にメスを入れ、捜査も最終段階に来ている模様だ。娘婿のクシュナー氏の関与も前々から取り沙汰されており、不名誉な結末が待ち構えているに違いない。

 そうした事態を回避するには、ホワイトハウスに居座り、免責特権を維持するしか生き残る道はないと思われる。「自分が再選されれば、次は娘か娘婿に大統領の座を譲れば良い」との心づもりのようだ。これでは「アメリカ・ファースト」ではなく、単なる「トランプ・ファースト」にほかならない。

 いずれにしても、かつて世界に轟いたアメリカの威光は見る影もない。残念ながら、そんなアメリカとの同盟関係に外交や安全保障を全面的に委ねているのが今の日本政府である。安倍首相は体調不良を理由に辞任したが、後任となった菅義偉新首相にはアメリカの現実を冷静に見極め、その二の舞を踏むことのないようにしてもらいたい。

 来(きた)る11月3日にどちらが勝利宣言をしたとしても、相手側は認めず、混迷と混乱の続くアメリカになるだろう。そうした事態を高みの見物と決め込み、ポスト・アメリカの未来図を密かに描いているのがロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席である。日本は独自の国家戦略を打ち出すチャンスと心得るべきだ。

(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

●浜田和幸

国際政治経済学者。前参議院議員、元総務大臣・外務大臣政務官。2020東京オリンピック招致委員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士