トランプ一家、米大統領選敗北なら“監獄行き”の可能性も…脱税、ロシアと共謀し選挙介入

 実は、トランプ大統領は前回の2016年の大統領選の時にも、所得税について同じような指摘を受け、「じきに公開する」と答えていたが、4年たった今でも一向に情報開示しないままである。何しろ、自らのヘアスタイルを維持するために7万ドルの整髪代を「必要経費」として計上しており、税務の専門家からは「いくらなんでも問題だ」と指摘を受けているほど。

 さらには、ニューヨーク郊外にゴルフ場建設のために200万ドルで購入した土地が土壌汚染で利用できそうにないとわかると、そのことを隠して2600万ドルの鑑定書を付けてニューヨーク州政府に寄付をしたのである。それは寄付による税金控除を受けるためであった。今ではこの土地は「ドナルド・トランプ州立公園」の看板だけが残る荒れ地となっている。

 もし、この不正行為が発覚すれば、間違いなくトランプ本人と関わった弁護士や税理士は監獄行きとなる。トランプ一家とすれば、あらゆる手段を講じて再選を勝ち取り、現職大統領特権で逮捕を免れる必要があるわけだ。その後2回のテレビ討論会が予定されていたが、2度目のネット討論会はトランプ陣営がキャンセル。そこで、最後となった討論会であるが、1回目と比べると相手候補が話している間はマイクの音声が切られるという横やり禁止措置が取られたこともあり、比較的落ち着いた雰囲気で行われた。

 とはいえ、双方とも相手の信用を貶めようという意図は見え見えであった。トランプ大統領はバイデン候補の息子がロシアやウクライナに加えて中国からも多額の金品を受け取り、父親のバイデン候補が副大統領であったことを利用し、政治的便宜を外国企業に提供したと批判し、「バイデン一家は不正一族だ」とこき下ろした。

 もちろん、バイデン候補も黙ってはいなかった。前回同様、トランプ大統領が納税証明書を公開すると言いながら、長年、隠し続けているのはなぜか、と追及。また、トランプ大統領は今でも中国の銀行に口座を維持しているのは、「利益相反の疑いがある」と批判したのであった。両者とも品位のかけらもない「泥仕合」を平気で演じているのである。

超リッチとプアに分断

 いずれにせよ、こうした状況に多くの国民が失望感にさいなまれているに違いない。これではどちらの候補が大統領になってもアメリカの凋落は食い止められないだろう。日本としてもアメリカの現実を冷静に直視する必要がある。かつては世界最強の富と指導力を誇っていたアメリカが凋落の一途を辿っている現実から目を逸らすわけにはいかない。

 歴史の必然かもしれないが、かつての超大国アメリカの屋台骨はことほど左様に崩れ始めている。その引き金を引いたのは新型コロナウィルス(COVID-19)だ。何しろ、感染者数でも死亡者数でも世界最悪の記録を更新中である。追い打ちをかけるように、アメリカ各地では人種差別に反対するデモや破壊行為が過激化する一方になってきた。第2四半期のGDPは通年ベースで32.9%の減少となり、これはアメリカ史上最悪の数字にほかならない。

 コロナ禍の影響は甚大で、日本もそうだが、アメリカでも観光業や飲食業の落ち込みは半端ない。全米レストラン協会によれば、少なくとも15%のレストランは廃業に追い込まれてしまった。州別で見れば、観光客依存度の高いハワイ、ネバダ、ニューヨーク各州の状況は特に悲惨だ。ディズニーランドに限らず、航空会社や鉄道会社も大幅な人員削減に追い込まれている。結果的に、全米の失業者数はうなぎ上りである。なんと失業保険を申請する人の数は30週連続で毎週100万人を超えている。全米の勤労者数は1億5200万人であるが、3人に1人は失業者という。