最初から無駄だと思ってやっている人はいません。あとで振り返ってみて、やったことが無駄だったと気づくのです。
では、何が無駄だったのでしょうか。
2.1万人に実施した行動実験では、まずはじめに内省(リフレクション)をします。これまで実行してきたこと、そして成果につながったもの、つながらなかったものを仕分けしてもらうのです。良かれと思ってやっていたが、振り返ってみると成果から遠ざかる結果となっていた、95%セールスに「よくあるムダ」を紹介します。
私たちは5年以上にわたって、トップ5%セールスの言動を調査・分析しています。
5%セールスだけでなく、95%セールスもランダムに選出して調査を行うことで、5%セールスの特異性を明らかにしようとしています。
会議での発言は、AIを使って文字に変換することができます。さらにAIで単語を分析して、使用頻度が多い言葉やポジティブな発言が多いかどうかといったことを調査しました。
すると、5%セールスと95%セールスで、ポジティブ発言とネガティブ発言の比率はさほど変わりはありませんでした。ただ、「頑張っているが成果が出ない人」のよく使う言葉を調べてみると、「ダ行」で発言を始めることが多いことが分かりました。
「だけど」「でも」「ですが」「どうしても」といった言葉を使ってしまうのです。相手から提言されても「ですが」で返し、時間に遅れてくると「どうしても」と発言してしまう確率が、5%セールスよりも高かったのです。
95%セールスの調査で、顧客への謝罪訪問でも「ダ行」を使ってしまうセールスが多いことが分かりました。
システム障害や製品不具合で企業顧客に迷惑をかけた場合に、訪問して謝罪することがあります。私も前職マイクロソフトに所属した際に、最高品質責任者として500件以上の謝罪訪問を経験しました。確かに、謝罪訪問時に「ダ行」で話し始めるセールスは顧客対応が下手でした。
顧客が怒り心頭の際に、「ダ行」で話をすると相手の沸点が上がります。
とくに頭を下げることが目的であると勘違いしているセールスは、「だけど」「でも」「ですが」「どうしても」とダ行を使い、相手の感情を逆なでします。「だ」「で」「ど」などの濁音も、耳障りになるようです。
相手の状況を理解し、イカリ(怒り)をリカイ(理解)に変えることを目的に謝罪訪問する5%セールスは、言葉選びに慎重です。相手が気に障りそうなNGワードは使わず、言い訳に捉えられてしまう「ですが」「どうしても」といった言葉は使いません。