もちろん、否定しなくてはいけない場面はどうしても出てきます。そんなとき、5%セールスは、「ダ行」ではなく、「サ行」の「しかしながら」「そうではありますが」と使うことが多いようです。
5%セールスは社内でも「サ行」をよく使います。
相手が主役のコミュニケーションをとるのが5%セールスですので、相手に喋らせます。
相手に話をさせるために、褒め方にも工夫が見られました。
彼らは「さしすせそ」を使って同僚を褒めることが多いです。
「さすが」「知らなかったです」「素敵ですね」といった言葉で褒めていました。調査後に知ったのですが、キャバクラ嬢も同じように「サ行」を使ってお客を褒めるそうです。「さしすせそ」で褒めると相手が喜ぶのは、ビジネスでも夜のシーンでも同じなのでしょう。
また、5%セールスは、ディスカッションの際にも「サ行」を使います。職責が違う人やバックグラウンドが異なる人と仕事をしなくてはいけません。同じ価値観の人だけで仕事を進めていくのは無理です。意見が異なる人たちとすり合わせていくのが社内会議の目的だと、5%セールスは発言していました。
会議のなるべく前半に「さらに、こういうことができるんじゃないか」とか「そもそも、この課題は……」と、「さらに」と「そもそも」で議論を広げたり深めたりして、参加者たちの意見を引き出し、調整していこうとしていました。
そして最終的にアクションが決まるように、意見をすり合わせるのです。
95%セールスはダ行ではじまる「だけど」「でも」「ですが」「どうしても」を使い、5%セールスは「さしすせそ」で褒める。
「さらに」と「そもそも」を使って会議で議論を深め、周囲のメンバーをアクションに導く5%セールス。ちょっとした言葉の使い方で、相手の反応が大きく変わるものだと感心しました。
突然ですが、あなたはエスキモーに氷を売ることができますか?
エスキモーとは以前の呼び名で、アラスカからグリーンランドまでの極寒の地に住み、主として狩猟をして暮らしている人々(現在では居住地域によってイヌイットあるいはイヌピアットという)のことです。
「イヌイットに氷を売ってこい」と指示されたら、とりあえず極寒の地に行って、イヌイットの人たちを前に「どうすれば売れるだろう?」と「How」から入って、「氷を売る方法」ばかりを考えてしまうのが95%セールスです。そして「当社の氷は他社の氷より温度が低い」などと、商材の機能にばかりフォーカスしてしまいます。
一方、5%セールスは、「なぜ氷を売らないといけないのだろう?」と「Why」から入ります。そして、氷を売る対象である「相手に興味を持つ」ことをします。
「氷を売る相手は、そもそもどういう人なのだろう?」
「その人にはどういう課題があって、どういう願望があるのだろう?」
5%セールスは、相手の課題や願望を起点に顧客を見ていきます。
「氷を欲している人はどんな人だろう?」
「氷には何ができるのだろう?」
「冷却能力がある? だったら冷却能力を欲している人はどんな人だろう?」
このように、あくまで相手の抱える課題や願望にフォーカスして、「その課題が生まれたのはなぜだろう?」「その願望が生まれたのはなぜだろう?」というWhy思考で相手の本質的な不安や欲求にアプローチしていきます。
イヌイットに興味を持って調べてみると、グリーンランドの北部から南部へ移住して都市生活をする人が増えていることが分かります。さらに調べると、カナダのケベック州にあるモントリオールという都市に相当数のイヌイットがいることを知ることができます。