「家族」というチームのつくり方

「子どもの将来を台無しにする」接し方と「子どもの才能を伸ばす」接し方の違い

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子どもを「大人扱い」できていますか?

皆さんは日頃、自分の子どもを「子ども扱い」していませんか? 子どもは子どもですから「子ども扱い」して何が悪いんだろう、と思われたかもしれません。

じつは様々な研究で、子どもを大人と同じように扱わず「子ども扱い」すると、心の成熟が遅くなってしまうという結果が出ています。
しかも私たち親は、自分の子どもを「子ども扱い」していることに気づいていません。無意識に以下のような声かけをしていないでしょうか。

「早く起きなさい」
「ご飯は残さないで食べて」
「なんでそういう食べ方するの!」
「宿題やりなよ」
「宿題やらないと先生に怒られるよ」
「いい子にしてないと鬼がくるよ」
「もうゲームは禁止!」

子どもは、自分で自分の行動を決定することがなかなかできません。そもそも「今何をすべきか」という問いを自分に向けることがありません。そこで親は子どもに「今何をすべきか」について、指示したり、命令したり、禁止したりします。これはごく自然なことです。
もしも親が、指示・命令・禁止をしなくなったら、子どもはどうなってしまうのでしょうか。多くの親御さんはこう考えると思います。

「無限にYouTubeを観続け、宿題をせず、遅刻を繰り返す子になってしまうのではないか?」

そう思ってしまうのも当然でしょう。ですが、そうなってはもう止められません。我が子に対し、指示・命令・禁止を繰り返す毎日になってしまうのです。
でも、本当にそれでいいのでしょうか。

部下を「子ども扱い」する上司たち

ビジネスの世界でも、部下を「子ども扱い」する上司はたくさんいます。

「遅刻するな」
「遅刻を繰り返すと信頼をなくすぞ」
「納期遅れ起こすな」
「お客様の前であくびはするな」
「ニュースを読め」
「もっと考えろ」
「やる気を見せてくれ」

このような声かけをする人は、昭和の時代なら「なんて面倒見のよい、愛情深い上司なんだ」と重宝される可能性さえありました。ですが今の時代は、このように細かくうるさい上司は好まれなくなっています。
皆さんはどう思いますか。親のように愛情深くていい上司だと思いますか?

組織開発を専門とする私も、部下のことを親のように愛情を持つこと自体はとても素晴らしいことだと思います。
ですが問題は、部下を「子ども扱い」してしまっていることです。
上記のような言い方を、例えば、相手がお客様だったらするでしょうか? もしも自分と部下が、人間として対等な大人だとしたら、どういう言い方になるでしょうか?
さっきの声かけを例にして、ちょっと変えてみましょう。

「遅刻はしない方が良くないですか?」
「今月は3回目の遅刻です。何か私が改善の力になれることはありませんか?」
「納期遅れが起きてしまいましたね。どうやって改善しましょうか?」
「お客様の前であくびをしていることに気付いていらっしゃいますか? お客様からはどう見えるでしょうね。私はできるならやめた方がいいと思いますが、いかがですか?」
「ニュースを読んで仕事に活かせることが多いと私は感じているのですが、ニュースを読むことを習慣化してみませんか?」
「この問題は、どう考えたらいいでしょうか?」
「お仕事のやる気に満ちあふれていますか? もっとやる気がでる方法はありますか? 何か私が力になれることはありますか?」

さあ、どうでしょうか。
大げさに表現してみたので、嫌味っぽく感じられたり、めんどくさいと思ったりした人がいるかもしれませんね。

とはいえ、言い換え前の声かけとは異なり、相手の立場への配慮が存在しています。そう、「子ども扱い」と「大人扱い」の大きな違いは、いわば「信頼」なのです。

他方、「子ども扱い」は相手のことを信頼していません。言い換え前の声かけの根底には、じつは以下のような不信感があります。

・どうせ自分が言わないと、やらないだろう
・自分で考えて行動する力はない
・厳しく言わないと変わらない
・できないヤツは、どんな言われ方をされても仕方ない

それに対して、言い換え後の「大人扱い」は、相手への「信頼」を土台にしています。

・この人には、自分で決めて考えられる力があるはず
・この人がやらないのは、何か理由があるはずだ
・どうサポートしたら、この人が行動できるようになるだろう?
・この人の可能性を引き出せるような関わり方はできないだろうか?

「子ども扱い」をすればするほど、部下は「あなたのことを信頼していない」というあなたからのメッセージを受け取ることになります。
逆に「大人扱い」をすればするほど「あなたのことを信頼している」というメッセージを受け取るようになります。
この違いが、ものすごく大きいのです。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

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その仕事、部下に任せなさい。

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