日本代表「ドーハの歓喜」強固なメンタル術の深み

サッカーW杯?ドイツ戦の勝利に酔いしれる日本代表メンバーたち
値千金となる追加点のゴールを決めた浅野拓磨選手(中央)などを取り囲む日本代表の選手たち(写真:徳原隆元/アフロ)

11月23日夜、「カタール・ワールドカップ」1次リーグE組のサッカー日本代表が4度の優勝を誇るドイツ代表に2-1で勝利を収めました。日本代表の奮闘と快挙に、試合中からツイッターのトレンドランキングが総なめ状態になったほか、渋谷や道頓堀で人々が喜びを爆発させるなど、今なお日本中が熱狂に包まれています。

なぜ森保一監督はこれまで見せなかった超攻撃的な采配を見せたのか。なぜ劣勢一方の前半から盛り返すことができたのか。なぜ交替選手たちがことごとく活躍できたのか。

それらの理由を考えるとき、戦術や技術などと同様に重要なのは、彼らのメンタル。彼らは試合終了直後に行われたインタビューで、その片鱗を見せていました。ここでは彼らのコメントをベースに、多くのアスリート取材歴を持つコンサルタントの目線から、「なぜ勝てたのか」「勝てるチームを作る方法」をメンタルの面から掘り下げていきます。

超攻撃的な采配を象徴するフレーズ

まず超攻撃的な采配で、日本代表をワールドカップ史上初となる逆転勝利に導いた森保一監督のコメントをあげてみましょう。

「選手・スタッフ一丸となっていい準備をして、そして粘り強く戦うことをやっていこうということで、勝利につながったと思いますし、現地ドーハに多くの日本人のサポーターが駆けつけてくれて、われわれの後押しをしてくれて、日本でも本当に多くの方がわれわれの応援をしてくれて、その後押しで最後まで戦えて勝つことができました」

最初に発したのは、リーダーとしての立場をわきまえたフレーズ。まずチームメンバーの仕事ぶりを称え、次に現地と日本の両サポーターの応援を勝因にあげました。

これらは当事者だけでなく他者、とりわけフォロワーを巻き込む組織マネジメントの手本とも言えるコメント。森保監督は常々「われわれ」というフレーズを多用していますが、これもチームの一体感を高めるとともに、「監督も権力者ではなくチームを構成する一員」というニュアンスを感じさせる効果的な言葉です。

「(ベンチが投入した選手の活躍について聞かれ)『チームの総合力で、そして総力戦で戦おう』ということ。スタートで出た選手ではなくて、途中から出た選手が試合を決める。試合を締める等々、その流れで自分たちのよさを発揮する。チームを勝たせるということを選手たちがやってくれたと思います」

「総合力」「総力戦」と語った通り、森保監督はオフェンシブな選手を次々に投入。これを見てネット上に、「これではディフェンスが危ないのでは?」「さすがにまだ早すぎるのでは?」「もし負傷者が出たらどうするの?」などと不安の声をあげる人も少なくありませんでした。

しかし、森保監督は1993年10月の「ワールドカップアメリカ大会」アジア最終予選・最終戦のロスタイムで失点して出場権を逃した「ドーハの悲劇」の当事者。「当時は気持ちが守りに入っていたことを後悔している」と何度も明かしていただけに、「総合力」「総力戦」を掲げ、率先して見せたアグレッシブな姿勢が選手たちに乗り移った感がありました。

好影響しか与えない堂安律の言葉

次に挙げたいのは、途中出場で値千金の同点ゴールを決めた堂安律選手のコメント。

「『俺が決める』っていう気持ちで入りましたし、『俺しかいない』と思ったので、そういう強い気持ちで(ピッチに)入りました。これに一喜一憂せず、強い気持ちを持ってまた一丸となって戦いたいですし、まあ『僕が日本サッカーを盛り上げる』って気持ちでピッチに立っているので、みなさんぜひ期待してほしいと思います」