仕事や年齢に対する認識は変える必要があるでしょう。そもそも、キャリアは流動性があっていいものです。流動性というと、すぐ「辞めて、転職」と考えがちですが、それは表面的です。流動性とは、自分の仕事に対する、あるいはさまざまな関係性に対する、向き合い方の柔軟性のことです。
日本では、キャリアの流動性というと、「組織の課題」と捉えられがちですが、流動性を高めていくのは、個人の覚悟です。より豊かに人生を謳歌し、何歳からでも新しいチャレンジをするということは、実は誰にでもできることなのです。
日本社会は、年齢に対するアンコンシャス・バイアスが強すぎます。例えば日本では、最初に出会ったときに年齢を聞くことがありますが、欧米ではそれは失礼な行為であり、ありえないことです。
年齢を聞くという行為は、高度経済成長を支えてきた日本型雇用の縮図でした。新卒一括採用のために、22歳からキャリアがスタートするという前提があり、年齢を聞けば、相手が何年目のキャリアなのか、自分よりも上なのか下なのかがわかります。年齢によって無意識のうちに、相手のキャリア=社内ポジションをジャッジするという心理があるわけです。
しかしそもそも、生物学的年齢を基準にキャリアを評価することが間違いです。企業側もそれに気がついてきていて、定年廃止や年功序列の廃止という議論へとつながっています。
時間に対する認識も変えなければなりません。
たとえば、大谷翔平、本田圭佑、中田英寿などの活躍者を見てみると、彼らが決して一芸で活躍しているのではなく、明確な行動戦略があることがわかります。
大谷選手や中田選手は、海外に行くために、高校から英語やイタリア語を学んでいたと言います、本田選手は、活躍しながら言語を学ぶために、あえて違う言語圏のチームを選んで所属しているというほどです。
これは、特別な、選ばれた人だけの話ではありません。キャリア形成のためのスキル習得には時間がかかるので、きちんと計画を立てることが重要なのです。時間の過ごし方を意識することで、誰でも、今日からでも、新しいキャリアに向き合うことができます。
前作と今作を通して読むと、今作のほうが、個人的なことよりも、より大きな世界の話をしているように感じられるかもしれません。しかし、本書が伝えようとしているのは、「1人ひとりが社会的開拓者」というメッセージです。
本書には、ヒロキとマドカという金沢で暮らす20代半ばのカップルなどがモデルとして登場します。決して、ハイエリート層だけを想定した本ではありません。
社会的開拓者になるというのは、要するに、「覚悟をする」ということなのです。能力があるからできる、できないという話ではなく、誰でも、何歳からでも開拓者になれるし、そのように生きることが、個人にとってのセーフティーネットとなり、心理的幸福感の高い人生をまっとうすることができるのです。
コロナ禍では、自殺が増え、たくさんの非正規雇用の方、女性たちが本当に困っていらっしゃいます。そういった方々にも、ぜひ自分への投資として、『ライフ・シフト2』を買って読んでみてほしいと思います。
非正規から正規へと転職できる可能性はありますし、シングルマザーでアルバイトをしているという境遇の方でも、もっといろんな戦略を立てることができるのではないかと思います。
社会的開拓者が対峙するのは、大きなチャレンジだけでなく、日常の小さなことや趣味も含まれると思います。ただし、時代の大きな潮流からそれないように、知見やスキルをアップデートすべきなのです。