日本人が気づかない「失敗するキャリア」最大理由

日本社会でのキャリアの歴史的転換期。キャリア設計から考える100年時代の行動戦略とは(写真:Rawpixel/PIXTA)
シリーズ累計50万部のベストセラー『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の最新版『LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2):100年時代の行動戦略』がついに刊行された。長寿化、テクノロジーの進化、コロナショックが続き、キャリアの歴史的転換期を迎えた日本に、ポジティブな人生設計のメッセージを送る本が登場したと見る田中教授に、本書の魅力を語っていただいた。

歴史的転換期にどう生きるか

日本社会は、キャリアを取り巻く3つの歴史的転換期にいます。

『LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2):100年時代の行動戦略』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

1つめは、政府による働き方改革の推進です。時短や勤務間インターバルなど多様な働き方ができるようになって、よりよくなってきています。

2つめは、経済界による終身雇用など日本型雇用の制度転換です。トヨタの豊田章男会長、経団連の故・中西宏明元会長などは、今後は自分たちでキャリア形成しなければならないという、ある種の警告を発しました。

3つめは、社会における今回のコロナ・パンデミックです。

この歴史的転換に翻弄されるのか、それとも主体的に乗りこなしていくのか。その2択を迫られた状況のなかで、『ライフ・シフト2』は、長生きをポジティブに捉えるというスタンスをとっています。

著者たちは、前作『ライフ・シフト』で、日本社会に対して、超少子高齢化という社会構造を生き抜く国として、世界的なロールモデルになってほしいと書いています。そして今作では、さらに踏み込んで「長寿の配当」に触れました。

日本人は、経済的報酬に重きをおいて働き、高度経済成長期を戦ってきたと思いますが、人生100年時代となり、「教育→仕事→引退」という3ステージモデルが立ち行かなくなりました。

最近、家電量販店のノジマが、定年を廃止して80歳を超えても働けるという制度を発表して話題になりました。その一方で、50歳以下の早期退職のニュースも話題に上ります。これまでのキャリアが非常に揺らいでいるのです。

このときに、長期的な時間軸で、ポジティブに行動戦略を考える必要性を、本書はより明確に日本人に届けてくれています。

「ソーシャル・パイオニア」として戦略設計を

前作から今作に通底しているのは、お金や不動産などの「有形資産」ではなく、健康やコミュニティなど「無形資産」にフォーカスする必要性です。

僕はここにヒントを得て、『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』を書き、「キャリア資本」という概念を紹介しました。

今後の日本では、企業におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)と、それを駆動させるための個人のCX(キャリア・トランスフォーメーション)が肝になると考えています。

『ライフ・シフト2』でも「DXやAIなどの技術変化は、人類に悲劇をもたらすのか?」という問いが立てられています。

これに対する答えとして、著者たちが打ち出しているのが、「社会的開拓者(ソーシャル・パイオニア)」という概念です。

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パイオニアという概念には、先駆者的で特権的なイメージがありますが、本書ではそうではなく、日常の行動戦略をしっかり練り込み、創意工夫することで、誰もがパイオニアになれるというメッセージが込められています。