ビジネスパーソンにとって特にSFプロトタイピングが役に立つのは、事業や製品を新たに創り出すような局面だろう。社内でプロジェクトを企画し、人材とリソースを回してゆく際には、いままで与えられてきた課題をこなすのではなく、これから進むべき道を決め、チームを動かす必要がある。
もちろん大前提として地道な分析は重要だが、確実な未来は存在しない。「こうなるだろう」ではなく「こうなりたい」という未来像を考えるように、思考法を切り替えなければならない。そんなミッションを背負ったあなたにとって、SFプロトタイピングがもたらす予想外の思考のジャンプ力は強い武器となる。
また、こうした思考のジャンプを、独りよがりではなく皆で協力して進めるためにも、SFプロトタイピングは役に立つ。社内で自分の意見を通すのは難しい。おそらくあなたの社内にはさまざまな専門家がいて、さまざまな価値観や意見を持っている。あなたのチームには優秀な人材が眠っているかもしれないが、社内のさまざまな圧力で、そうした人々の意見を十分に掘り出せないこともある。
そんなときに、SFプロトタイピングを介した議論が効果を発揮する。空想の世界には自由がある。「フィクション」であれば、誰もが枷を外して新しいアイデアを発言し、コミュニケーションしやすくなる。また、物語の世界の登場人物たちの気持ちに寄り添えば、その登場人物たちをなんとか救い出すアイデアも湧きやすくなる。あなたのチームを活性化させること、それが、SFプロトタイピングのもう1つの利点である。
自分が作家でないことなど気にしなくていい。場合によってはSF作家の手助けを借りてもいいのだ。最終成果物は作品ではない。あなたの企画だ。アマチュア上等、見様見真似で気軽にいけばいい。作品を作るプロセスから、未来をみんなで考えること、その力を養うこと、それがSFプロトタイピングの価値である。