地頭力をシンプルに表現すると、「結論から」「全体から」「単純に」考える3つの思考力になります。この3つの思考力は訓練によって鍛えることができるものであり、地頭力を鍛えるための強力なツールとなるのが「フェルミ推定」です。
インターネットによる情報検索が発達し、世の中のありとあらゆる情報が一瞬にして入手できるようになりました。その結果として、情報量という観点からは専門家と素人の差がほとんどなくなってきています。
そして膨大な情報量そのものが、「コピペ」するという姿勢で使っている場合は人間の考える能力を退化させ、思考停止を招く可能性があります。AI(人工知能)の進化、発展によって、「情報を処理する」ことによる「問題解決」の多くも、AIが人間の代替をしてくれるようになりつつあります。
これから本当に重要になってくるのは、インターネットやAIでは代替が不可能なエリア、膨大な情報を選別して付加価値をつけていくという、本当の意味での創造的な「考える力」です。この基本的な「考える力」のベースとなる知的能力を、私は「地頭力」と定義しました。
「地頭」(じあたま)という言葉は従来コンサルティング業界では頻繁に用いられていましたが、2007年の出版時点では皆、曖昧な定義で用いていたので、それを明確に表現したということです。
ビジネスコンサルタントとして、若手コンサルタントと一緒にさまざまなプロジェクト活動を行う中で、短期間で成長していくコンサルタントに共通の思考回路、「地頭力」が存在することに気づきました。
その本質が、「結論から考える」仮説思考力、「全体から考える」フレームワーク思考力、「単純に考える」抽象化思考力の3つであり、そのベースとなるのが「万人に理解される」ための論理思考力、経験と訓練で鍛えられる直観力であり、さらにそれら全体のベースとなっているのが「知的好奇心」です。
これが、私が考える地頭力の全体像です。
それでは、実際に「地頭力」を鍛えるにはどうすればいいのか。
その訓練のツールとなるのが「フェルミ推定」です。
「日本全国に自動販売機は何台あるか?」「世界中で1日に食べられるピザは何枚か?」といった、把握することが難しい膨大な数量について、何らかの推定ロジックによって短時間で概数を求める方法をフェルミ推定といいます。
「原子力の父」として知られるノーベル賞物理学者エンリコ・フェルミ自身がこうした物理量の推定に長けていたと同時に、教鞭をとったシカゴ大学の講義で学生にこのような課題を与えていたことからキョウフェルミ推定と呼ばれます。
「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」という質問が、フェルミ推定の「古典」として有名です。