次のキーワードは、前提条件の設定です。使える情報が限られる場面では「先に進むために前提条件を決める」能力が必要になってきます。
例えば、先の例題に対して、「そもそも道路の定義は?」「どこまで細い道まで入れるのか?」「私道は?」「農道や林道は?」などと悩み出したら、あっという間に時間切れになってしまいます。
フェルミ推定が有効な状況というのは前述のように「ざっくりと全体像を描く」ことが求められる、問題解決でいえば「川上」に相当する場面です。厳密性が求められる仕上げ段階のような「川下」で通常仕事をしている専門家のような人は、逆にこのような詳細にこだわるあまりに川上では力を発揮できない場面があるのです。
時間を決めてとにかく結論を出す「タイムボックス」の考え方も大切で、仮説思考では「スピード重視」になります。
フレームワーク思考は大きく「対象とする課題の全体像を高所から俯瞰する全体俯瞰力」と、「とらえた全体像を最適の切り口で切断し、断面をさらに分解する分解力」とで構成されます。さらにこの「分解力」は「分類」(足し算の分解)と「因数分解」(掛け算の分解)とに分けられます。
では、フレームワーク思考力は、フェルミ推定でどう鍛えることができるのでしょうか。
フェルミ推定の「アプローチの設定」から「モデルの分解」に至るまでのプロセスは、フレームワーク思考そのものです。
ここでのポイントは大きく、以下の5つがあります。
まず視点移動に関して、全体俯瞰ができるようになると、はじめに全体像をとらえた後で部分像へ「ズームイン」の視点移動で考えます。「視点の低い」人はまず身の回りのこと、とっつきやすいところから全体に広げていく「ズームアウト」的な視点の移動をしがちなので、注意が必要です。
次の切断の「切り口」の選択では、例えば、道路の長さの算出ではいくつかの仮説が立てられます。解法例のように単位面積での距離から考えることもできるし、道路全体の面積を平均の幅で割るということもできるかもしれません。そのような切り口のオプションを複数出して、最適と思われるものを選択していきます。
続いて分類(足し算の因数分解)では、全体をもれなくダブりなく適切なセグメントに分けていきます。道路の例題で言えば、高密度(市街地等)と低密度(山間部等)に分けることがこれに相当します。狭義の「フレームワーク発想」ともいえ、これを効率的に行うためのツールが3Cや4P等々のフレームワークです。
次に各セグメントを因数分解(掛け算の分解)します。ここでは、複雑な全体像を取り扱いやすいサブ要素に展開できる力が必要とされます。
最後がボトルネック思考です。因数分解ではボトルネックとなる因数の精度によって全体の精度が決まります。一部だけを詳細化したところで、最終結果はいちばん不確かな情報量のところがボトルネックとなります。それを考えれば、計算しやすいところだけを詳細に計算しても意味がない、ということです。
抽象化思考力とは、以下の3つのステップによる思考パターンのことです。
では、フェルミ推定をどう活用して、抽象化思考力を鍛えるか。
キーワードは、以下の3つです。