十七の冬にオメガだと診断された。通っていた高校と塾をやめ、オメガを守るための施設に入った。ベータからオメガへの性転換はごく稀にあるらしいが、その大半が幼少期に起こる。ベータとして育ち、恋をして。報われるなんて夢は見ていなかった。それでもよりによって年に一度の番選び直前に性転換するなんて本当についてない。番選びなんて名前だが、オメガに決定権はない。楽しむのはアルファだけ。オメガになった途端に知らない男のブツを突っ込まれるなんて惨事でしかないが、それを一回だけ回避する方法がある。それは田賀谷さんに選ばれることだった。
文字数 54,411
最終更新日 2024.03.23
登録日 2022.04.20
【前向きな主人公がもふもふと一緒に宿屋の手伝いもしつつ、錬金飴を作成&販売する話】勤続年数が長いわりに大したアイテムが作れないことを理由に、突然のクビ宣告をされたジゼル=スターウィン。だが初級魔法道具ばかり作っていたのは先代ギルドマスターから言われていたから。実施は他の魔法道具も作れる。そんな主張も虚しく、渡されたのは通告書だった。荷物を持ってとぼとぼと下宿先の宿屋に帰ったジゼルだったが、宿屋の夫婦は温かく迎えてくれた。そしてジゼルの表情が明るくなると、女将はとある話を切り出して……。(完結まで予約投稿済み)
※錬金飴…ジゼルの祖母が作っていた薬あめを錬金術を用いて改良したもの。肩こり・風邪に効く飴、腰痛に効く飴、疲労回復効果がある飴の三種類がある。効果だけではなく味もそれぞれ異なる。
文字数 153,306
最終更新日 2023.09.03
登録日 2023.07.28
自分でもうさんくさいと思う外面を貼り付け、今日もアカデミー棟にあるアルサム=ベルガの研究室を訪れる。無視されるのも重いため息を吐かれることももう慣れた。けれどそれは人付き合いが苦手な彼が私を遠ざけるために取る態度であり、根は悪い人ではないこともとっくに気づいている。だから今日も『とある目的』を達成するため、彼に話しかけるのだ。※『「お姉様だけズルい」が口癖の妹の可愛いワガママ』に登場する妹・メリッサの数年後のお話。本作だけでもお楽しみいただけます。
文字数 12,296
最終更新日 2023.08.18
登録日 2023.08.18
「お姉様だけズルい」
それがメリッサの口癖だった。口を開けばズルいズルい。ケーキが食べたい。ドレスが欲しい。アクセサリーが欲しい。魔法の言葉を口にすればなんでも手に入ると思っていた。実際、両親は末っ子のメリッサには甘かった。私もそう。五つ年下の妹が可愛くてたまらなかった。お兄様の溺愛は凄いもので、私は可哀想な子だと誤解されることもしばしば。でも実際は違うのだからと目を背けてきた。
けれど十五歳の頃、転機が訪れる。婚約者のジャック王子が私を家に送ってくれた時、メリッサは例の言葉を口にした。だがメリッサのズルいが向けられたのは予想外のもので......。
文字数 7,936
最終更新日 2023.05.27
登録日 2023.05.27
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。
文字数 6,895
最終更新日 2023.05.24
登録日 2023.05.24
辺境伯令嬢ウェスパルは王家主催のお茶会で見知らぬ令嬢達に嫌味を言われ、すっかり王都への苦手意識が出来上がってしまった。母に泣きついて予定よりも早く領地に帰ることになったが、五年後、学園入学のために再び王都を訪れなければならないと思うと憂鬱でたまらない。泣き叫ぶ兄を横目に地元へと戻ったウェスパルは新鮮な空気を吸い込むと同時に、自らの中に眠っていた前世の記憶を思い出した。
「やっば、私、悪役令嬢じゃん。しかもブラックサイドの方」
ウェスパル=シルヴェスターは三部作で構成される乙女ゲームの第二部 ブラックsideに登場する悪役令嬢だったのだ。第一部の悪役令嬢とは違い、ウェスパルのラストは断罪ではなく闇落ちである。彼女は辺境伯領に封印された邪神を復活させ、国を滅ぼそうとするのだ。
ヒロインが第一部の攻略者とくっついてくれればウェスパルは確実に闇落ちを免れる。だがプレイヤーの推しに左右されることのないヒロインが六人中誰を選ぶかはその時になってみないと分からない。もしかしたら誰も選ばないかもしれないが、そこまで待っていられるほど気が長くない。
ヒロインの行動に関わらず、絶対に闇落ちを回避する方法はないかと考え、一つの名案? が頭に浮かんだ。
「そうだ、邪神を仲間に引き入れよう」
闇落ちしたくない悪役令嬢が未来の邪神を仲間にしたら、学園入学前からいろいろ変わってしまった話。
文字数 364,449
最終更新日 2023.05.19
登録日 2022.01.20
嘘の日こと、番選びの日が近づいてきた。周りのオメガ達はどんなアルファに選ばれるのかとソワソワとしている。この中で番に選ばれるのは一握りだけ。大抵は行為に耽って、数日後に何もなかったように施設に戻される。どんなに愛を囁かれても首筋を噛んでもらえなければ、気に入ってもらえなければ番にはなれない。その決定権をオメガは持っていない。 次の年に選んでもらわなければ再び会うことさえ叶わぬ、嘘をいくらでもつける日。それが嘘の日。そんな日に参加するのも今年で七回目。けれど一度だって抱かれたことはない。俺を選んだアルファ達は皆、性欲や恋愛感情を欠片も向けてこなかったのだから。
文字数 14,202
最終更新日 2023.04.02
登録日 2023.04.01
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。
文字数 9,492
最終更新日 2023.03.31
登録日 2023.03.31
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。
文字数 13,880
最終更新日 2023.03.22
登録日 2023.03.22
浮気男がきっかけで死んだ前世をドルティアは浮気男が大嫌いだった。そして将来浮気をするかもしれない婚約者への好感度は、前世の記憶を取り戻したと同時に地の底へと落ちた。前世で乙女ゲームをプレイしていた時から彼が嫌いだったのだ。ドルティアは王子の過失による婚約破棄を期待しながら、執事見習いのビィリアスと共に釣りをする。
文字数 12,743
最終更新日 2023.03.13
登録日 2023.03.13
婚約者に浮気されたアンナ=ヴェルンは婚約破棄をした。夜会デビュー、それも王家が主催している夜会の少し前に。次の婚約者がすぐに見つかる訳がなく、アンナは周りからの好奇の視線を受けながら夜会に参加することになってしまった。その日は第四王子、エイリーフの夜会デビューでもあり、会場内の視線が彼に向いている間に外に出たアンナだったが……。
文字数 25,835
最終更新日 2023.03.09
登録日 2023.03.09
シリウスは地味で平凡なオメガである。人に胸を張れることといえば、家族仲がいいことくらい。それでも優秀な婚約者と肩を並べても恥ずかしくない何かを手に入れたくて、得意の薬学を極めることにした。学園に認められゼミ入りをし、今度は国に認められた。嬉しくて、早くこのことを伝えたくて、婚約者の元へと駆けた。けれど聞こえてきた声は冷たいものであった。
文字数 8,047
最終更新日 2023.02.25
登録日 2023.02.25
Dランク冒険者 アリハム=ベドルがなんやかんやあって石釜パンを食べる話。
文字数 19,969
最終更新日 2023.02.24
登録日 2023.02.24
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。
文字数 12,031
最終更新日 2023.02.04
登録日 2023.02.04
聖女シーリアは無能聖女と呼ばれている。能力がない訳ではない。自分にしかその能力が適応されないのだ。だから他人の役に立つことは出来ない。だが彼女は自身が他人から何と呼ばれようが気にならなかった。家族や自分を愛してくれる人がいればそれでよかった。
今回、帝国に嫁いできたのも姉と彼女の愛した人との婚姻を進めるため。ずっと二人の仲を応援していたシーリアだったが、当の姉はシーリアのことを心配し、なかなか結婚してくれない。だから帝国より送られた『ゴルードフ伯爵家の聖女を妻によこせ』という書状を利用することにしたのだ。
文字数 20,913
最終更新日 2022.07.28
登録日 2022.07.27
品がないという理由で婚約破棄されたメリエラの頭は真っ白になった。そして脳内にはリズミカルな音楽が流れ、華美な羽根を背負った女性達が次々に踊りながら登場する。太鼓を叩く愉快な男性とジョッキ片手にフ~と歓声をあげるお客も加わり、まさにお祭り状態である。
だが現実の観衆達はといえば、メリエラの脳内とは正反対。まさか卒業式という晴れの場で、第二王子のダイキアがいきなり婚約破棄宣言なんてするとは思いもしなかったのだろう。
文字数 6,553
最終更新日 2022.05.01
登録日 2022.05.01
水の魔法使いであるラッティはSランク水魔石を完成させる間近に殺された。犯人は第二妃。彼女はラッティがアラージフ陛下から寵愛を受けていると勘違いしていたようだ。だが寵愛以前にアラージフとはほとんど顔を合わせていない。やりとりだって手紙を介して業務的な連絡を行うのみである。勘違いもいいところだが、それを訴える余裕さえない。完全に意識が途切れる直前、ラッティは今後こそは普通の生活が送れますようにと強く願った。そう、彼女が殺されるのはこれがはじめてのことではない。殺される度に十六の誕生日に戻り、何度もループを繰り返しているのである。
文字数 24,626
最終更新日 2022.01.11
登録日 2022.01.11
また一人、キャサリンの美貌に陥落した。
今回、私の元にやっていたのは騎士団トップの象徴である赤マントを羽織ったアイゼン様。他の騎士達や貴族令息のように姉を紹介してほしいとやってきたのである。
顔良し、血筋よし、武力よし。
軍事力を重視するこの国では貴族の権力と並んで重要視されるのは武術であり、アイゼン様は将来性がズバ抜けている。
普通なら声をかけられて喜ぶところだけど、私達は違う。キャサリンを嫁入りなんてさせられない。
だってキャサリンは11年前に私と入れ替わった双子の弟なのだから!
顔見せもデビュタントも入れ替わったままで切り抜けたけど、いつまでも入れ替わったままではいられない。これを機に再度の入れ替えを試みるが、アイゼン様の様子がおかしくてーー
文字数 123,944
最終更新日 2021.12.31
登録日 2021.10.03
「ウェリア、は、その……どんな菓子が好きなんだ?」
こんな問いかけをされるのは十年間の婚約者生活で初めてだ。一体どんな心境の変化だろうか。本人も慣れていないからか視線が泳いでいる。突然の質問に、思わずずっと我慢していた言葉が漏れてしまうも、彼は優しく微笑んだ。
「菓子くらいで気にするな。婚約者だろう」
心を許した相手には塩対応なオリヴァー王子が、外向けの笑顔を見せたのだ。頭が真っ白になり、その後はどんな話をしたのか覚えていない。それでも捨てられたことは理解した。彼は最近懇意にしているスーミン様に切り替えるつもりなのだろう。
文字数 12,705
最終更新日 2021.12.03
登録日 2021.12.03