第7回ホラー・ミステリー小説大賞
選考概要
1,302作の応募があった第７回ホラー・ミステリー小説大賞。その中で一次選考を通過したのは38作品。魅力的な探偵が活躍する作品や、背筋が凍る怪異モノ、孤島での連続殺人をテーマにしたミステリーなど、多彩な作品が集まった。
その後さらに検討を進め、編集部内で大賞候補としたのは、「放浪探偵の呪詛返し」「穢れた、記憶の消去者」「呪配」「Lv.」の4作品。
異なるジャンルでどれも読みごたえはあったものの、いずれもあと一歩決め手に欠け、残念ながら大賞の該当作はなしとなった。次点として、心情描写と殺人トリックが秀逸な「Lv.」に新設のクローズド・サークル賞、サスペンスとSFを巧みに融合させた「穢れた、記憶の消去者」に謎解き賞、地方ローカル色をうまく作品に落とし込んだ「放浪探偵の呪詛返し」に異能賞、日常に潜む怪異の恐怖を鮮明に描いた「呪配」にオカルト賞のテーマ別賞を授与。その他、最終選考に残ったものの、惜しくも授賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「Lv.」は、孤島で発生する連続殺人を描いた物語。逃げ場のない環境における不安や、拡大していく恐怖がリアルに描かれており、クローズド・サークルものとして上手く纏まっていた。
「穢れた、記憶の消去者」は、「望んだ記憶を消すことが出来る」という斬新な設定が魅力の作品。登場人物の過去や思惑が複雑に入り乱れる展開を、緻密な筆致で描き切っていた。
「放浪探偵の呪詛返し」は、観光好きの探偵が全国を旅しながら、道中で出会った怪異を祓うライトミステリー。テンポの良さに加えて、キャラ同士の関係性が丁寧に描かれていた点が評価された。
「呪配」は、デリバリーアプリという昨今の流行をテーマに落とし込んだ意欲作。死が宅配されるというキャッチーな設定と、終盤まで続く勢いのあるホラー展開に驚かされた。
なし
雨宮楓の心霊事件簿
Lv.
脱出不能、通信不能の閉ざされた弧島に集められた登場人物たちが次々と死体に変えられていく展開に、緊迫感がありました。主人公の兄妹二人の掛け合いもテンポ良く、どんどん先を読みたくなる作品になっています。
穢れた、記憶の消去者
「特定の記憶を消去できるようになった社会」という設定がとても斬新でした。それに加えて恋人を亡くした主人公の思いや、記憶を失ったと称する少女との交流も丁寧に描かれていて、サスペンス以外の部分も読みごたえがあります。
放浪探偵の呪詛返し
主人公の天満が全国各地で相次ぐ呪いを解決するために奔走する、軽快な語り口が魅力の作品でした。天満と兼嗣の、憎み合っているがなんだかんだ認め合っているという関係性も、作品によいアクセントを加えていました。
呪配
フードデリバリーアプリから「死」が届けられるという設定が非常にキャッチーかつ印象的でした。それだけでなく、主人公の大学生、慧斗と不思議な力を持つ青年、來の互いを信頼し合う関係性もこの作品ならではの魅力です。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。昭和の閉塞的な雰囲気漂う世界観が見事で、その中で活躍する魅力的な設定を持つ主人公の物語が、多くの読者の心を掴んだのではないでしょうか。