或る箪笥と一生

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 代々受け継がれてきた箪笥には、様々な噂が付き纏っているが、確実な話が一つだけ存在している。
 それは、〝箪笥が開くと必ず人が死ぬ〟ということ。
 呪具とまで言われ一族から忌避されてきた箪笥だが、現所有者である正子だけは箪笥の秘密を知っていた。
 所有者は一人。
 しかし、来たるべき時が訪れるまでは、触れることも眠っているモノを取り出すことも出来ない箪笥。
 新たに受け継ぐ者を選び、口伝すれば所有していた者の役目は終わる。
 だが、抽斗の中には大切なモノが収められていて。
 あの世に持っていけるのかも、この世で使い果たせるのかもわからない箪笥の中身。
 収められていた〝何か〟を手にしたとき。
 人は何を感じ、何を思い出すのだろうか。
 これは時代を繋ぎ、人々を見守ってきた、見失われた時間を与える不思議で温かい箪笥と所有者達の物語である。
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