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第一章
8王命
しおりを挟む何所の国も共通しているのは、貴族は国王の命令を無視して婚姻を結ぶことも破棄することも許されない。
ましてや先日の場は隣国だけでなく他国の貴族も参加していたパーティーだ。
そこで勝手に婚約破棄騒動を起こしたことは重罪である。
「国王陛下…」
「先日の事でだ」
来た!と思った。
むしろ遅すぎたぐらいだったが、勇者御一行が国に留まっていたのだ。
王女もいるので無下にできないと思ったのだが。
「そう怯えるでない。私はそなたを責める気はない」
「え?」
「被害者であろう…何故そなたを責められようか…もしメティスが同じ目に合っていたら私は婚約者の首をへし折っている。この手で」
見事なまでな上腕二頭筋を見せる国王。
彼は頭で考えるよりも行動的な脳筋だった。
「だが、そなたには国を出て貰わなくてはならない」
「…はい。覚悟しております。貴族籍を除籍するつもりです」
大事な場をぶち壊したのはヘリオスだが事前に止めることができなかったのだから自分にも責任があると思ったのだが。
「いや…そうではなくてだな。そなたを隣国フリーレンに行ってもらわなくてはならない」
「えっ…」
「というのも我が国の軍事力の弱さは知っているな」
「恐れながら…」
魔物討伐が終われば共通の敵はいない。
各国が協力体制を取る必要は無くなったので、今度は国同士の攻め合いだ。
そこで問題になるのが国をどう守るか。
大国ではないのでどこかの国に守ってもらわなくてはならない。
アルフェッカ王国は海に囲まれているので他国に責められやすいのだ。
「この度、我が国はフリーレン王国と同盟を結ぶことになった」
「それは王女殿下に婿を?」
「いや、フリーレン王国の王侯貴族の…リモージュ侯爵がそなたを妻にと望んでいる」
「えっ…」
「国と国を結ぶ外交だ。そなたが嫁いでくれるなら資金援助、兵を派遣してくれるそうだ。勿論王家からもそれなりの物は用意する」
リモージュ家と家が王族と親戚となる。
王家の血縁関係ある家柄と何故と思ったが、既に決定事項なら断ることはできない。
「エスリード家のバカ息子があんな真似をするとは思わなんだ…故にこちらでそなたに傷がつかないようにする」
「よろしいのですか?」
「むしろそなたが隣国に行ってくれれば国は助かるからな…国が沈まなくて済む」
当初は国外追放になるかもしれないと思っていたので安堵する。
婚約破棄をされてすぐに新たな婚約というのが複雑だが、国の為にできることがあるならばと思った。
エリオルへの思いは消しきれないでいるが、生きていることが解ったから十分だ。
少しだけ胸が痛かったが。
「それでお相手なのだが…」
その時だったノックの音が聞こえた。
「陛下、よろしいでしょうか」
「入ってくれリモージュ侯爵」
「え?」
噂の人が現れると思い緊張したが、ふと思ったのは聞き覚えのある声だった。
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