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第一章
7蚊帳の外
しおりを挟む勇者一向に囲まれるソフィアは戸惑っていた。
隣国の英雄で今では世界を救った英雄でもある彼らと言葉を敵わすなんてと思ったが、ふと見ると彼らが身に着けているのはソフィアが作った装飾品だ。
「気づいたか?」
「ルクス…」
「お前が被災地に送ったお守りだ。偶然店で見つけたんだ」
「素晴らしい効果だったよ。我が国でもこれほどの品は作れない」
ローゼマリーに賛美され恥ずかしそうにする。
ソフィアは自分への評価が低すぎた。
これまで蔑まれたことも多かったが、ヘリオスは何かにつけ上から目線だった。
「私が作ったのは子供のお守りに毛が生えたようなものです」
「これは…なんというか」
「エリオル、貴様は最愛の幼馴染になんてことを言わせているのだ。妻となる女性に…」
「はい?」
ローゼマリーの言葉にキョトンとする。
他の者達は急い黙らせるが、ソフィアは気づいていない。
「もしや知らないのか」
「さっきまで他の男の婚約者だったんだぞ」
ローゼマリーの言葉にルクスが呆れるが事情をしならない仲間達は絶句した。
特にローゼマリーは本当に茶番劇だと思っていたのだが。
「あの男、本当に婚約していたのか?あんな無能な男でも嫁を貰えるのだな」
「えっ…どういうことでしょう」
「我が国には留学生が多いのだが、あの男の悪い噂は酷い物だ。頭が悪ければ素行も悪く勘違い野郎だと」
「王女が野郎なんていうんじゃねぇよ」
ルクスが言葉遣いが悪いと注意するが本人はケロッとしている。
「まったく細かい男だ。だからお前は戦場でも苦戦するんだ」
「言っておくが俺は人間だ。お前みたいなでたらめに強い王女じゃねぇんだよ。おいユリファン!お前も黙ってんじゃねぇよ」
「いや…うん」
「このへなちょこ勇者!」
「へなちょこ言うな」
随分と腰の低い勇者である。
本当にこのメンバーが英雄か疑いたくなるのだが、事実だ。
「随分と愉快な友人ね」
「ああ、この明るさがあるからなんとかなった…というか、全員王女の寄せ集めだったんだがな」
「そうなの?」
寄せ集めで英雄になれたということは目利きの才能があるのでは?と思った。
「我が国の男は腰抜けが多いんだ」
「いや、女がたくまし過ぎるんだよ。どこの世界に家政夫がいるんだよ。男のメイドも多くて騎士は女の方が多いって何んだよ!」
「それは…なんというか」
女性に優しい国づくりをしているのがローゼマリーだが、もはや女性に優しい世界というよりも男性に厳しい世界と言っても過言ではない。
祖国もそうだが、王女が強い国はぶっ飛んでいると思ったソフィアは婚約破棄騒動の事などすっかり忘れて勇者御一行と交流を重ねていた。
それから一週間。
実に平和な日々を過ごし、メティスの計らいで王宮にて彼らの世話係を申し付けられていたのだ。
そんな折、国王に呼び出されることとなった。
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