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第3章 冒険 -グランツ編-
母と兄
しおりを挟むパチパチパチ…。
「シェリル、婚約おめでとう」
「もらってくれる人が見つかってよかったな!」
ロナルドさんが去ったすぐ後で、どこからともなく拍手の音と共に、男女の声がした。
「お母さん、レオ兄もありがとう!」
おっ! シェリルのお母さんとお兄さんのお出ましかー。
2人ともシェリルに似てるな笑
いや、違うか。シェリルとお兄さんがお母さん似なんだな。
どっちかというとみんな可愛い系だな。
ちゃんと挨拶せねば…。
「シェリルのお母さんとお兄さんでいらっしゃいますね? 私、今は冒険者をしてますシーマと言います。隣りが婚約者の…「セレナです。よろしくお願いします。」」
「私はシェリルの母のステラです。2人共シェリルの言ってた通りの美男美女だわ」
「僕はシェリルの兄のレオンだ。よろしくね。僕もシェリルから話は聞いてるよ。コスタで精龍亭やってるんだって?」
「えぇ。今は休業中ですけどね」
「だけど思い切ったことしたよねー。繁盛してたんじゃないの?」
「それほどでもないですけど、セレナが襲われたこともあって、今は強くなることのほうが優先なんです」
「あら~。愛する人のために強くなるって考え方は好きよ。ついでにシェリルのためにも強くなってね」
「なってね❤」
「なってね❤」
いやいや、シェリルは十分強いじゃん。
しかも、何その被せ!
セレナまで乗っかってるし!
可愛いが渋滞中してまーす。
ここは俺に分が悪いので話しを変えにかかるかー。
「それに、冒険しながらいろいろな食材や料理を試してみたいんです」
「その成果はあったのかい?」
「現段階ではそれなりですね」
「そんなことないじゃん! シーマさ…の料理はスゴく美味しいんだよ! お母さんとレオ兄にもさっきのヤツ出してあげてよー」
俺はまたアイテムボックスからフライドポテトと塩唐揚げを1皿ずつ出して、目の前のテーブルに置いた。
「こちらは私がここに来る直前に作った『がいも』と『ブラックバード』の料理になります」
「あら、見た目がもう美味しそうね」
「あぁ、これは楽しみだ」
2人はそう言った後で、それぞれを順番に口にしていく。
「「!!」」
「これは結婚ね」
「間違いない。これは結婚だよ」
えっ?!
シェリルの家系は美味しい料理を作る人に嫁ぐ習わしでもあるの?
そんなことを考えてたら、レオンさんからさらに声をかけられた。
「これらのレシピは教えてもらえるの? 何だったら商会で買ってもいいけど」
「自分の料理は精龍亭のお客さんの為にあります。レシピを公開するのは精龍亭で提供した後になるかと」
「そういうことかー。まぁそうだよね。精龍亭の再開前に他の店で提供されてたら特別感がなくなるもんね」
「我儘言ってすみません」
「いや、いいんだ。こっちも無理を言ってすまなかった。こちらも出方を変えることにするよ」
「と言いますと?」
「シーマくんにレシピ込みでの新作料理の依頼を出す。それならいいだろ?」
「その内容は?」
「シンプルなものだよ。元気になれる簡単な料理を考えて欲しい」
「あら、それいいわね。精力がつくものだと嬉しいわ」
途中でステラさんも話に乗っかってきた。
もしかして、ステラさんも夜の悩みだったりするのかなー。
聞くだけ野暮な気がするから怖くて聞けないけど。
「わかりました。引き受けましょう。期限はいつまでですか?」
「そのうちグランツを出ていっちゃうんだろ? それまでに僕達が納得出来るものを作って欲しい。でも、試食は何度でも協力するから安心してくれ」
「一発勝負だと不安なので、何度がチャレンジさせてくれるのは助かります」
「よし。決まりだな。よろしく頼むよ」
「シーマくん、お願いね」
ステラさんとレオンさんはそう言って立ち去っていった。
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