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4・初めての国内視察

4-31・見つめ直すこと⑫

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 自分がいったい何を辛いと思っているのか。
 発端となった出来事はもちろん理解している。
 ミスティの暴挙。閨の中でのひどい暴力。初めてだと思うぐらい、乱暴に扱われて。
 それが辛かった、悲しかった、それは間違いない。
 だけど本当に、その出来事・・・・・が発端だったんだろうか。
 あれはきっと決定打だった。ティアリィはそう判断している。
 それまでくすぶっていた火種が弾けた。ただそれだけのことなのだろうと。
 だからこそ根本的な火種を探りたかった。
 自分の気持ちを、見つめ直したかった。
 そしてその手段の一つとして、アルフェスとも話そうと思ったのだ。
 最愛の妹ルーファと旅をして、楽しかった。
 でもきっとだからこそ向き合おう、そう思えた。
 改めて自分のこれまでを思い返そうと。
 アルフェスの方は向かず海を見る。
 顔を見て話すのは、ほんの少しだけ気まずかった。

「色々と思うことがあって。……アルフェスとも、話すことを避けてきただろう? 今更なんだけど、話した方がいいような気もして。…………いや、違うな。……君と話すことで、自分の心の整理をつける助けとしたいのかもしれない」

 つまりはただ利用したいだけ。
 アルフェスとのわだかまりを、自身の整理に役立てたいと。
 言葉にすると、途端ひどいことをしている気になって、ティアリィは躊躇い戸惑った。
 そんなつもりはなかった、ない、つもりだった。
 だが本当に、全く何も想定していなかったのだろうか。
 ティアリィには自分がわからない。
 いずれにせよ11年も前の話を蒸し返す。それは間違いなく、ティアリィだけの都合なのだ。

「本当に今更ですね」

 案の定、アルフェスの声に呆れが混じる。
 アルフェスがティアリィへと、そんな声で応じるのは珍しい。だがそれはティアリィが甘んじて受けなければならない咎めであることは間違いなく。

「……すまない。自分勝手だった」

 気付くとするり、謝罪が口から滑り出ていた。
 アルフェスが、はぁと小さく気を吐く。おそらくは呆れたからゆえの溜め息。

「それもまた、今更です。貴方は昔からそういう、少し傲慢な所があった。でも、貴方のそんな所も僕は好きで、惹かれていて。頼りがいがある。そんな風に思っていました」

 こうしてアルフェスの内面を聞くのは、もしかしたら初めてかもしれなかった。
 アルフェスは口下手で、あまり自分の心情や希望を言葉にしなかった。
 いつも何かもの言いたげにティアリィを見て、目で媚びて甘えるように名を呼んだ。
 今のアルフェスには、そんな様子など微塵もない。
 11年。短くはない月日を思った。
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