結婚10年目で今更旦那に惚れたので国出したら何故か他国の王太子に求婚された件。~星の夢2~

愛早さくら

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4・初めての国内視察

4-32・見つめ直すこと⑬

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 アルフェスは小さく、おそらくは自嘲ゆえだろう笑みを浮かべて更に話しを続けていく。

「貴方は人の好意には鈍いくせに、それ以外の感情の機微だとかには敏くて、よく僕の気持ちも組んでくれて。優しいから、いつもいっぱい僕を気遣ってくれて嬉しかった。僕はルーファと同じぐらい、貴方に大切にされていた自覚があります。そして僕はそんななたに頼って、甘え切って。……貴方が僕に与えてくれることが出来る以上のもの・・を、いつしか求めるようになってしまった」

 それは違う、咄嗟に否定しようとした言葉は、だけどそんな風に話すアルフェスの表情を見ていると、喉につかえて出て来なかった。

「僕の何がいけなかったのか。貴方がどんな理由で僕ではダメだ、そう思ったのか。今の僕はわかっているつもりです。でもあの時はわからなかった。僕は貴方が好きで。貴方とただ一緒に居たかった。貴方と婚約者同士だっていう事実を、とても嬉しく思っていた。でも……」

 アルフェスの視線が遠くなるのがわかる。
 多分、見ているのは入り江にいるルーファなのだろう。ティアリィではなく、今、アルフェスの隣にいて、彼と人生を共にしている彼女。

「僕は貴方に与えられることだけを求めていた。僕は貴方が好きだったのに、貴方に与えることを考えなかった。貴方が好きなんだったら、貴方の方から触れてくれるのを待つのではなく、僕から貴方に手を伸ばせばよかったんだ。きっと貴方は拒まなかったのに。……そうでしょう? 貴方は当時、陛下のことだって特別に思っていたわけじゃない、それぐらい僕だってわかります。貴方は陛下の手を拒みませんでしたね。僕の手もきっとあなたにとって陛下のそれと同じだったでしょう。でも僕はそうしなかった。恥ずかしい話ですが、あの頃の僕は深く考えたことがなかったんです。でも……閨での役割は重要ですね。今、改めて考えてみても。おそらく僕から貴方に触れることはできなかったでしょう」

 珍しく饒舌に言葉を尽くすアルフェスの話はティアリィにとって思い当たることしかなかった。
 アルフェスの言うように、ティアリィはアルフェスのことだって大切に思っていたのだから。
 そして、当時のティアリィの心情として、アルフェスに向けている想いと、ミスティへのそれに、大きな差などなかったのである。
 二人共を幼馴染みとして大切に思っていた。
 もしアルフェスが手を伸ばしてきていたなら。アルフェスが今告げた通り、ティアリィは拒まなかったことだろう。
 だがそれはいずれにせよ、逆など考えつかない程度の、欲を伴わない感情だった。
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