Xのブロック仕様変更で高まる「Bluesky」への期待

Bluesky
Xから派生した新たなSNSプラットフォーム「Bluesky」(筆者撮影)

2022年10月、イーロン・マスク氏によるTwitter(現:X)買収以降、かつての「インターネットの広場」は激動の時代を迎えている。大規模な人員削減、突然の機能変更、そして物議を醸す政策転換。これらの混乱は、多くのユーザーに不安と不満をもたらした。広告収入の激減や企業価値の下落など、経営面でも課題が山積みとなっている。

この不安定な状況下で、新たなSNSプラットフォームが静かに、しかし着実に台頭してきた。それが「Bluesky(ブルースカイ)」だ。

Bluesky誕生から急成長まで

皮肉にもBlueskyの起源はTwitter自身にある。2019年、当時のTwitter社長ジャック・ドーシー氏が立ち上げたプロジェクトが、マスク買収後に独立。「誰もが自分のSNS体験を自由にコントロールできる世界」を目指し、分散型のプラットフォームとして生まれ変わったのだ。

Blueskyは2024年に入り、急速な成長を遂げた。2月の一般公開後、日本で約1週間で約36万件のアプリダウンロードを記録した。招待制だった約1年間のダウンロード数が77万件だったのに対して、極めて短期間で半数近くの新規ユーザーを獲得したことになる。

招待制廃止後の拡大には、有名クリエイターの参加も大きな役割を果たした。Xで100万人以上のフォロワーを持つ人気漫画家「ナガノ」氏が、Blueskyの一般公開直後にアカウントを開設したことで、多くのファンがBlueskyに流入。ナガノ氏はBluesky で6番目にフォロワーが多いアカウントとなっている。また、人気漫画の「葬送のフリーレン」も一般公開にあわせて公式アカウントを開設している。

BlueskyはTwitterのような分散型SNSだ(Bluesky公式アカウント)

8月にはブラジルの最高裁判所がXに対してサービスの停止を命じるという事態が発生し、ブラジルのXユーザーが大量にBlueskyへ移行。9月17日には、ユーザー数が1000万人を突破するという驚異的な成長を遂げた。

さらに10月、Xがブロック機能の仕様を変更すると発表した翌日の10月18日、Blueskyは2日で120万人の新規ユーザーを獲得したとアナウンスした。同時期、Xの「AI学習にユーザー投稿を活用できる」という規約もネガティブな話題となり、多くのクリエイターがBlueskyにアカウントを開設したようだ。

タイムラインを多層化できる

Blueskyの最大の特徴は、ユーザーが自由にタイムラインをカスタマイズできる「カスタムフィード」機能だ。この機能が多くのユーザーをBlueskyに惹きつけている要因の1つとなっている。

カスタムフィードは、従来のSNSにおけるリストやハッシュタグとは異なり、より柔軟な情報収集を可能にする。ユーザーは特定のキーワード、言語、画像の有無などの条件を組み合わせて、自分だけの独自のフィードを作成できる。言い換えると、話題や興味関心を中心とした情報の流れを作り出すことができるのだ。

Xのタイムラインは「フォロー中」と「おすすめ」の2種類が選べるが、Bluesky ではさまざまなアルゴリズムを持つフィードを登録できる(筆者撮影)

フィードの種類は実に多様だ。特定のアニメや動物に特化したフィードなど、ニッチな話題に焦点を当てたものも数多く存在する。さらに、プログラミング知識のある開発者なら、Twitterの「おすすめ」のようにユーザーの好みを学習するフィードを作ることも可能だ。これらのフィードは、Blueskyの投稿全体をさまざまな角度から切り取り、並列に存在する複合的なタイムライン群を形成している。