2024年4月時点で、約4万種類ものカスタムフィードが存在している。この数字は、ユーザーの創造性とBlueskyのプラットフォームの柔軟性を示す1つの指標と言えるだろう。
フィードの作成は、技術に詳しくないユーザーでも行えるよう設計されている。SkyFeedなどの外部ツールを使えば、簡単な操作でフィードを作れる。一方で開発者向けにはAPIも提供されており、より高度なカスタマイズも可能だ。この二段構えのアプローチにより、幅広いユーザーがそれぞれのスキルレベルに応じてフィード作成に参加できる環境が整っている。
カスタムフィードの特徴的な点は、その公開性にある。作成したフィードは原則として公開され、ほかのユーザーもそれをフォローできる。さらに気に入ったフィードには「いいね」もできる。この仕組みにより、ユーザー間で興味深いフィードを共有し、新たな発見や交流が生まれやすい環境が整っている。
カスタムフィードを通じて見えるBlueskyの世界は、大手SNSとは一線を画す特徴がある。公式アカウントやインフルエンサーが比較的少なく、アルゴリズムによる推奨も控えめなため、ユーザーの素直な感想や日常の一コマが中心となっている。これにより、情報収集だけでなく、人々の興味や好みを通じたつながりを感じられる場となっているのだ。
Blueskyの柔軟で多様なカスタムフィードを可能にしているのが、その根幹を成す分散型SNSの技術、AT Protocol(Authenticated Transfer Protocol)だ。AT Protocolは、従来のSNSとは異なる「分散型」という特徴を持つ。
分散型SNSとは、簡単に言えば「1つの会社が全てを管理するのではなく、多くの人や組織が協力して運営する」システムだ。AT Protocolの最大の特徴は、ユーザーデータを特定のプラットフォームから独立させることだ。ユーザーは自分のデータを自分で選んだサーバーに保存でき、万が一サービスが終了しても、データは失われない。さらに、異なるアプリケーション間でのデータの共有も可能になる。
この分散型の特性が、先に述べたカスタムフィードの多様性と柔軟性を支えている。ユーザーや開発者が自由にデータにアクセスし、独自の方法で情報を整理・表示できるため、4万種類を超えるカスタムフィードが生まれた。
AT Protocolの開放性と柔軟性は、世界中の開発者たちの創造力を引き出している。特に日本の開発者によるサードパーティーアプリケーションの開発が活発だ。Bluesky PBCのジェイ・グレーバーCEOは「日本の開発者たちの取り組みに感銘を受けている」と言及するほどだ。グレーバー氏によると、日本の開発者たちは独自のクライアントやAndroidアプリを構築し、AT Protocolに接続するためのさまざまなバージョンのアプリケーションを作成しているという。
日本の開発者たちの活動は、Blueskyの分散型アーキテクチャの可能性を実証する具体例となっている。彼らの貢献により、プラットフォームの多様性が増し、特に日本のユーザーにとって使いやすいサービスが次々と登場した。
これは2010年代前後にTwitterが急成長していたころのエコシステムと似ている。その後Twitterは開発者向けのAPIを遮断してエコシステムは途絶えたが、分散型SNSであるBlueskyの場合は同じ轍を踏まないだろう。
BlueskyのAT Protocolは、誰でも自由にアプリやツールを開発できる仕組みを提供している。これは2010年代初頭のTwitterのように、開発者が自由に創意工夫を凝らせる環境だ。日本の開発者たちも独自のアプリを次々と生み出しており、Blueskyをより便利で多様なプラットフォームにしている。 TwitterはXに生まれ変わり、外部開発者による開発を制限するようになったが、Blueskyは分散型の仕組みを採用することで、誰もが参加できるオープンな環境を守れる。そこがXとの違いだ。