Blueskyは個人ユーザーを中心に急速に成長を遂げているが、企業の公式アカウントはまだ少ない。しかし、先進的な企業の中には、このプラットフォームの可能性に着目し、積極的に活用を始めているところもある。
その一例が、靴下専門ブランドのタビオだ。タビオは、Blueskyの一般公開と同時にアカウントを開設し、その日のうちにカスタムフィードも実装するなど、新しいプラットフォームに対して積極的な姿勢を見せている。
タビオのSNS担当者によると、Blueskyアカウント開設の主な目的は「会社の姿勢」や「商品」について知ってもらうことだという。同社は「できる限りのプラットフォームを活用したい」という方針のもと、一般ユーザーへの解放を機にBlueskyの使用を開始した。
タビオは、Blueskyのユーザーについて「“目立つために発信する”という意識が低い傾向にある」と評価している。むしろ、そうした姿勢に疲れた人々が多く集まっているという印象だ。バズることを意識しないでいいという共通認識が、投稿する側と見る側の両方に存在していることが、現時点でのBlueskyの大きな特徴だと捉えている。
この特徴は、企業のPRという観点からは一見デメリットに思えるかもしれない。しかし、タビオはこれを逆手に取った見方をしている。タイムラインが「無数のノイズで占められない」ため、逆に企業のメッセージがより伝わりやすくなる可能性があるというのだ。
タビオは今後のBlueskyの活用について、「長くお付き合いできるユーザー様とつながること」を期待している。同社は、現在の企業SNSの役割において「目立つ」ことよりも「信頼できる姿勢」を示すことが重要だと考えており、その姿勢を感じてもらうための取り組みに注力する意向だ。
しかし、タビオのような先進的な事例はまだ少数派だ。多くの企業は、Blueskyの将来性を見極めている段階にあり、本格的な活用にはまだ踏み切っていない。ユーザー数の増加や機能の充実、さらにはマーケティング効果の実証などが進めば、今後より多くの企業がBlueskyに参入する可能性がある。
Blueskyが企業にとって魅力的なプラットフォームとなるかどうかは、ユーザーとの新しい関係性の構築や、従来のSNSとは異なる形での情報発信が可能になるかどうかにかかっている。タビオの事例は、そうした可能性を示す先駆的な取り組みと言えるだろう。
Bluesky PBCのCEOであるジェイ・グレーバー氏は、Blueskyの目標について次のように語っている。「Blueskyの最終目標は、誰もが自分たちの体験を自分自身で制御できるようになることだ。特定の人たちが強大な力を持つことは望ましくない」。
また、Blueskyの開発者であるジェレミー・ジョンソン氏は、さらに具体的なビジョンを示している。「Twitterで起きたような、誰かがやってきて現状を変えて、これまで築いていたコミュニティを完全に破壊するようなことは、Blueskyでは起こしてはならない。例えプロトコルの1つが故障したとしても、他のサーバーを存続できる。それがAT ProtocolとBlueskyの望ましいあり方だ」。
この2人の言葉が示すように、Blueskyが目指すのは、「誰もが自分のSNS体験を自由にコントロールできる世界」だ。一企業の判断で突然大きな変更が起こるような従来のSNSとは異なり、ユーザー1人ひとりが主役となれるような環境を作ろうとしているのだ。