「前回と今回の会見では、普段であれば事務所が相手にしないような小さな媒体や批判的な報道が目立つ媒体にも案内状を送って参加を認めており、その点には事務所の変化を感じる。ここまで批判を浴びている以上、事務所としてもこれ以上、批判の種をまくのは避けたいところなので、この期に及んで事務所が一部記者に当てないようにしていたとは考えにくく、事務所が言うようにこのPR会社が独断でやったと考えられる。ただ、まずかったのは、会見を2時間と制限して打ち切った点と、ジュリー氏が欠席した点だ。いくら叩かれても、時間無制限で報道陣から質問から出なくなるまでやって、ジュリー氏本人もたとえ答えられない場面があったとしても厳しい質問を受けるシーンがテレビやネット動画で広まれば、世間からも一定程度の同情は得られただろう。形的には『まだ疑問は残るけど、とりあえずは膿を出し切った』という印象を与えて世論のガス抜きを図るべきだった」
創業当時からずっとジャニー氏、メリー喜多川元副社長の側近としてメディア対応を取り仕切っていた白波瀬傑・前副社長の出席を求める声も強いが、テレビ局関係者はいう。
「それは絶対に無理。真相はともかくジュリー氏は一貫してジャニー氏の一連の行為を『知らなかった』という姿勢を貫いているが、白波瀬氏は知らなかったはずはないので、もし会見に出れば、ジャニー氏の行為に事務所としてどのように関与していたのかも含めてすべて話さなければならなくなる。もしそうなれば、本当に事務所は終わる」
そんな今回の会見で渦中の存在となったFTIコンサルティング。アメリカに本社を置きグルーバルに拠点を展開するコンサルファームであり、同社のHPには次のように書かれている。
<グローバルビジネスアドバイザリーファームとして、M&Aや事業再編あるいは訴訟等をはじめとする経営上の重要課題に対するサポートの提供を行い、グローバルビジネスにおける企業価値向上を支援します。 業務デューデリジェンス、ビジネスインテリジェンスをはじめ、不正行為調査、コンピュータフォレンジック、Eディスカバリー、知的財産権保護コンサルティングあるいはクライシスコンサルティングをはじめとする、幅広いビジネスリスクに対するソリューションを提供します>
危機管理・広報コンサルタントで、長年、企業・自治体の管理職向けに模擬緊急記者会見トレーニングや研修・セミナーの講師なども手掛けてきた平能哲也氏はいう。
「2回の会見自体への評価としては、謝罪会見にしては珍しいほど合格点に近い。1回目での社名変更しない点は私も批判的だったが、東山氏、井ノ原氏、ジュリー氏(今回は欠席)は記者の厳しい質問に対して真摯かつ率直に答えており、様子が乱れたり声を荒げたりするような場面もなく、特段に問題は見られなかった。企業等の酷い謝罪会見をこれまでどれほど見てきたことか。
NG記者リストに関するジャニーズ事務所の否定コメントを読む限り、事務所が指示したとは考えにくい。一方、FTI側が、クライアントである事務所に忖度して、サービスだという意識でこのような行為を行った可能性は十分に考えられる。批判的な質問が出ないままスムーズに会見を終えることで事務所から評価されて、今後の継続的な取引につなげたいと考えてもおかしくはない。
もっとも、記者の顔写真までのせたリストを、証拠が残ってしまう書面で作成し、さらに報道陣から見えるかたちで会場に持ち込むというのは、コンサルティング会社やPR会社の情報セキュリティ感覚としては信じられない。もしその事実が公になればどのような事態を招くのかということへのイマジネーションが欠落している。危機管理(広報)意識の欠如そのものだ。