メーカー側の訴求も、消費者心理を見据えて行っている。
「大切なのはカカオポリフェノールを継続的に摂取することですが、美味しさや楽しさの視点が欠かせません。消費者の方と向き合うと、『健康になりたいよりも、QOL(Quality of Life=生活の質)を高めたい』意識を感じます。美味しいチョコだから続けられる、おやつを食べる楽しさ、も訴求しています」
昭和時代から続き、何度もブームとなった喫食での「健康志向」だが、病気になった時に飲む薬のような意識では長続きしない。一般の健康機能性食品が、昔に比べて味わいやすくなったのも、そうした一面が大きいだろう。
「高カカオチョコレート市場」が形成された今だからこそ、消費者に対する正しい啓発も必要だ。たとえば「カカオ分〇%=カカオポリフェノールの数値」ではない。新規商品が増えて市場が活性化すると、玉石混交となる恐れもある。
「チョコレート効果 CACAO 95%」(内容量60gの紙箱。標準12枚入り)では、パッケージにカカオポリフェノールが「1枚当たり174mg、1箱当たり2088mg」と明記されている。“説明責任”としては親切だが、消費者にとっては、1日当たりの適切なカカオポリフェノール量も知りたいところ。パッケージで何をどこまで表示するかの問題もあるが、商品と向き合ってそんなことも感じた。
また、消費者は健康志向の一方で「糖分への欲求」もある。
清涼飲料の例では、「無糖飲料製品の構成比は、2018年で約49%」(全国清涼飲料連合会調べ)というデータがあるが、最近は各メーカーから有糖の茶系飲料が発売されている。紅茶飲料は今でも有糖が強い。取材を重ねると「甘みでほっとしたい」思いも強いようだ。
年々売り上げが拡大する「チョコレート効果」は、前途洋々が続くのか。これまでの取り組みにはリスペクトしつつ、今後の状況も注視したい
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)