「当社は長年チョコレートの商品開発を行っており、ココアブームの前からチョコの原料であるカカオに豊富に含まれるポリフェノールにも注目し、研究を進めていました。そこで、おいしさに加えて健康をコンセプトに、カカオポリフェノールを多く含むチョコレートの開発を目指し、1998年『チョコレート効果』を発売したのです」
当時のチョコに対する消費者意識は(今でも多くはそうだが)、子どもからお年寄りまで大好きな嗜好品で、大半の商品は甘さが持ち味だった。
そんな時代に“苦みのきいた健康訴求のチョコ”は受け入れられずに低迷した。
「チョコレート=甘い」は長年、消費者に刷り込まれた意識だ。一般的に食べられるようになったのは大正から昭和にかけて。「ポケット用ミルクチョコレート」(1918年、森永製菓)や「明治ミルクチョコレート」(1926年、明治製菓=当時)が発売された。戦後の高度成長期以降、多くのメーカーから発売されて大衆化、巨大市場が創られていった。
消費者が持つイメージを払拭するのは簡単ではない。ただし、チョコレートは美味しい一方で、健康面を考えるとネガティブなイメージがあり、食べる量を制限したい商品でもあった。「チョコレート効果」はここに目をつけたが、発売から17年も低迷した。
この間、耐え忍んでいたわけではない。カカオに含まれるポリフェノールは苦くて渋いので、課題を解決するため世界中のカカオを研究、あまり苦くないカカオも探したという。
潮目が変わったのは2014年だ。愛知県蒲郡市と愛知学院大、そして明治という産官学の共同研究で臨床実験を行った。具体的には蒲郡市内外に在住する347名(45~69歳)に「高カカオチョコレート(カカオ豆由来の成分が70%以上のチョコレート)を1日25g、4週間にわたり摂取」してもらった。臨床者の摂取前後のデータを測り、検証した。
その結果、高血圧の人は血圧が下がったり、善玉コレステロール(HDL)の血中濃度が上昇したりするなどの効果が認められた、という。これを2015年にメディアが「カカオ70%以上の高カカオチョコレートの健康機能性」として報道すると、「チョコレート効果」も脚光を浴びるようになる。同年の売り上げは低迷期の2010年に比べて約10倍となった。
現在は紙箱(標準12枚入り)だけでなく、大袋(同22枚入り、45枚入りなど)もあり、味もアーモンドやマカダミアのナッツタイプを用意するなど、さまざまな喫食シーンに対応している。前述したように主要支持層は50代以上だが、パウチタイプだけは違う動きをする。「ほどよい苦みと、ちょうどよい甘みからか、会議の前やちょっとした息抜きとして20~40代の支持が高い」という。
「チョコレート効果」は、1日当たり3~5枚食べるのが一般的。もちろん新田さんは毎日習慣的に喫食するそうだが、興味深い動きも出てきた。
「コロナ禍で、袋入りを買われる方が増え、全売り上げの4割を占めています」
喫食が習慣化すると、箱入りに比べて1枚当たりの単価が安くなる大袋を買う人も増えるのだろう。別の取材ではコロナ禍で「アイスクリームもノベルティ(1個売り)よりもマルチパック(複数個が入った箱や袋入り)の売れゆきが高まった」という話を聞いた。