そうした消費者志向を見据えて、メーカー側が訴求した結果といえそうだ。
麦茶に限らず、最近のペットボトル容器は「600ml」も多くなった。消費者が500mlより600mlを選ぶ理由を、もう少し考えてみたい。
「平均気温の上昇とともに、物理的に飲む頻度・量が増えていることと、体調管理の手段として水分摂取の意識が高まっていることも挙げられます」(同)
近年は、夏場の熱中症リスク回避として、テレビの画面でも各地の最高気温の紹介とともに「こまめに水分補給を」のテロップが流される時代だ。
「麦茶については、もともとご家庭で多めに煮出しして飲むものでした。現在はペットボトルの麦茶(特に2Lの大容量)と煮出し・水出しの麦茶を併用する方が多いです」(同)
煮出しや水出しはコストパフォーマンスがよいが、同社の消費者調査では、「抽出して飲むまで2時間以上かかり、つくるのが間に合わない」という声が上がったという。そこで2019年『GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ』を発売した。この商品は濃縮された麦茶を缶から出し、水と混ぜるだけで1~2リットルの麦茶がすぐできるものだ。
消費者からは「濃さを調節できるので好きな味がつくれる」「水出し・煮出しのようにティーバッグを取り出さないのがいい」という声もあったという。夏は麦茶をごくごく飲みたいという意識は、昔も今も変わらない。2020年からのコロナ禍で在宅時間も増えた。麦茶に関しては、ペットボトルの大容量化以外に、手軽に簡単につくりたい意識も高まった。
少し本筋から離れるが、この機会に飲料容器の歴史も紹介しよう。
まずは、自販機需要が高い「缶コーヒー」について。現在の同市場を広めたのは、UCC上島珈琲(当時は上島珈琲)といわれる。それまでも缶コーヒーはあったが、1969年に“完全な商品として開発した缶コーヒー”を発売。翌年の大阪万国博覧会で大人気となった。この商品は、同社創業者・上島忠雄氏の「もったいない」精神もあった。
当時、列車で各地を飛び回っていた上島氏は、駅の売店で瓶入りのコーヒー牛乳を買う。ところが一口飲んだところで発車のベルが鳴り、飲みかけのコーヒー牛乳を置いて、あわてて乗車。「もったいない」という思いを抱き、持ち歩きができて、いつでもどこでも飲める、瓶以外の形状を……と考える。これが同社の缶コーヒーが生まれるきっかけだった。
2000年代以降、「チルドカップコーヒー」の人気が高まった。プラスチック製カップにストローをさして飲むタイプが多く、取材では「カップで飲むコーヒーだと口紅がつくが、ストローなら口紅をそれほど気にしなくてよい」という女性の声も聞いた。この市場は、1993年発売の「マウントレーニア」(森永乳業)がけん引してきた。
200ml以下~1L容量が多い、紙パック容器も各社が出している。こちらは茶系飲料もある。また、瓶入り容器も多かったが、小瓶の牛乳も最近はプラスチック容器が増えた。
このように容器には「缶」「紙」「瓶」もあるが、現在はペットボトルが主流なのだ。