公共性のある情報をネットで発信しているのは、行政機関をはじめ、すでにさまざまなところがある。ただし、それはどれも無料だ。
希少な電波を割り振って使う「放送」と、特別な認可を必要としない自由な「ネット通信」とでは、その成り立ちからしてまったく異なる。ネット後発組のNHKだけが特別扱いされなければならない道理はない。「NHKのネット番組」には公共性がないと国民に判断されれば、ネット受信料構想はたちまち水泡に帰す。
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そんな面倒な議論を棚上げにしたまま答申では、パソコンやスマートフォン、タブレット等のインターネット接続端末を持っている者すべてに費用負担、すなわち受信料を求める案も検討されている。NHKは「答申」資料の中で、「単にパソコン・スマートフォン等のネット接続機器を持っているだけで負担をお願いする、ということは考えていない」としているが、ワンセグ放送導入時、同放送のみを受信する人もNHK受信契約が必要になるとの報道をまったく見かけなかった上に、NHK自身も積極的に周知はしなかったことを考えると、「今は考えていない」くらいに聞いておいたほうが無難である。
気になる「常時同時配信」の受信料額だが、答申では、「なるべく放送のそれとの差をつけないことが望ましい」としており、現在は月額1310円、年額1万4545円(ともに振込用紙での支払い額)の「地上契約」と同程度になるらしい。
その上で、受信料を払わずに視聴する「フリーライド」は断固として阻止する構えのようだ。答申中にも、「フリーライド(費用を負担せずに視聴すること)を抑止する」との文言が登場する。
しかし、放送法を改正し、放送とネットの両刀使いであまねく日本中から受信料を取ることが可能になった暁には、それはもはや「受信料」ではなく、事実上の税金となる。となれば、NHKは「公共放送」と名乗ることはできなくなり、放送にネットが合流した「国営メディア」と化す。
無料、あるいはNHKオンデマンドのような随意契約(NHKが言うところの「有料対価型」)の形で当初はスタートさせ、追って受信契約を義務付ける仕組みへと移行させることも検討されている。
その“こけら落とし”イベントとして想定されているのが、2020年の7月から8月にかけて開催される予定の東京オリンピック・パラリンピックだ。NHKでは、「常時同時配信」は遅くとも今年中にはスタートさせておく必要があると考えており、閣議決定された放送法改正案も、今国会での成立を目指している。今や政府とNHKは一心同体である。
反対の声がないわけではない。当の「答申」がアップされているNHKのウェブサイトでは、民放各社や国民からの反対意見が一緒に公開されていた。
青森放送。
「費用負担のあり方について、『受信料型を目指すことに一定の合理性あり』、としながらも『制度検討に時間がかかることが予想される』と、検討作業がまだ不十分な段階であることを自ら認めていると解釈できます。(中略)一定の期間を設定して利用者に費用負担を求めない運用も検討しうるという想定については、受信料の公平負担という基本的な考え方からは逸脱をし、受信契約者から見ると著しい不公平感が生じる可能性があります」
テレビ新潟放送網。
「NHKの常時同時配信の負担のあり方によって、NHKのさらなる収入源が安定的になることで、NHKと民放局の収益格差が拡大することは、番組制作面での格差が拡大することに繋がり、民放局の事業圧迫とともに、自助努力だけでは補えない情報格差に繋がる可能性があることを強く懸念します」