だが、NHKがIOCに支払う莫大な五輪の放映権料の原資は、もとをたどれば国民から徴収した受信料。NHKがなくなったとしても民放やネット配信で五輪は見れるので、国民は困らないし、今はNHKが開閉会式や多くの競技を中継しているから、私たちもNHKでそれらを見ているにすぎない。
“災害報道や政見放送、国会中継などのためにNHKは必要”という声もあるが、多額のコストを投入して運用されるNHKという組織がその機能を担う必要はなく、国がはるかに低コストでそうした情報を国民に向けて発信する仕組みを税金で構築すればよい。さらにいえば、受信料として集めたお金から多額の製作費を費やして、ドラマやバラエティ、『紅白歌合戦』などを制作する必要性があると考える国民が、どれだけいるのかという問題もあるし、事実上の民業圧迫だという批判は以前から業界内で根強い。
NHKが一組織である以上、自らの組織を存続させようとあらゆる動きを取るのは当然。そこは国が法律を変えるなどして、NHK解体も含めた新たな枠組みを模索しない限り、議論は進まないだろう」
当サイトは19年4月28日付け記事『NHK、スマホ・PC保有者も受信料義務化を検討…テレビ非保有者も年額約1万5千円』でこの問題を報じていたが、改めて再掲載する。
※以下、肩書、時間表記、数字等は掲載当時のまま
――以下、再掲載――
最高裁判所は今年3月12日、テレビのワンセグ放送を受信できる携帯電話を持っている人はNHKと受信契約を結ぶ義務があるとする決定をした。その法的根拠は、テレビを設置した者はNHKと契約しなければならないとする「放送法」である。
放送法第64条はこう定める(カッコ内は筆者の補足)。
「協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」
しかし、地デジのハイビジョン放送が12セグメント(フルセグ)を使い、解像度がおよそ200万画素であるのに対し、1セグメントだけ使うワンセグ放送はその27分の1の7万6800画素しかない。つまり、画質には雲泥の差がある。それでもNHKは同額の受信料を取るのだという。
「公共放送」を名乗っている割に、やることが相当えげつない。せめて画質が悪い分、値段を12分の1なり27分の1にする割引料金を設定するのが筋だろう。威張れる画質ではないのだし、NHKの「公共放送」としての公共性や公平性を考えるなら、ワンセグ放送の視聴は無料で十分だと思う。
それでもNHKは、最高裁のお墨付きを得たことで、受信料の未契約世帯やテレビのない世帯の携帯電話ユーザー、そして未契約世帯のカーナビユーザーなどに対し、意気揚々と受信料を請求していくのだろう。だが、NHKの野望はそれだけにとどまらない。次なる獲得目標は「ネット受信料」である。
3月5日、NHKのすべての放送番組をインターネットでも同時に配信できるようにする放送法改正案が閣議決定された。今の放送法では、災害報道やスポーツ中継などに限り、ネットへの同時配信が認められているが、同法の改正によってすべての番組をネット配信できるようになる。
ただでさえ、公共の電波を「放送」として使える特権を与えられているというのに、NHKは“もっと特別扱いしてほしい”と言っている。
「20代~50代では、テレビをほとんど見ない、またはまったく見ない視聴者・国民が増加しており、1日あたりのテレビ視聴時間は、特に若年層ほど短い傾向にある。また、年代が低くなるほど、インターネット利用者の割合が大きいとする調査結果も出ている」(太字は筆者)