中野区、奇抜すぎる図書館が物議…ツタヤ図書館インスパイア系、10mの高層書架

 このことから、役所は当初から、批判されるであろうことは十分に覚悟のうえで話題になることを狙った「炎上マーケティングではないのか」との指摘が、にわかに信憑性を帯びることになった。

 もうひとつ驚いたのは、日本最大級の高層書架の存在が、市民にもまったく知らせていない“騙し討ち”にほぼ等しい行為だったことである。

 中野東図書館は2つの図書館の閉館に伴って進められた計画だったことから、旧図書館の閉館に反対する市民も少なくなく、計画段階からそのプロセスについては情報開示請求もされていた。

 事前に開示された図面やパース等をみれば、その存在は一目瞭然のはずだ。それにもかかわらず、建物が完成し、開館まで100日を切った準備段階で、超高層書架が明るみに出るというのは、実に不可解である。

 区の担当部署によれば、複合施設の基本設計(案)は2017年10月4日に議会提出されていたが、この時点では、建物内に吹き抜けをつくることは明示されていなかったという。

 しかし、2018年6月からの専門家会議までにつくられた実施設計では、明確に吹き抜けを設置することが示されていて、そのことについて専門家会議の委員も承知していたはずだという。さらに、2019年8月からの市民も含めて4回実施された検討会議でも承認されたはずというが、その議事録をみても、超高層書架の話はどこにも見当たらない。

 何より、この超高層書架が描かれた建築パースが、これまでに公開された形跡はどこにもないのだ。担当部署でもパースは把握していないというから、それでは誰も異を唱えようがない。区内で図書館について活動している市民団体のメンバーは、こう話す。

「事前に提示されていた図面からは、そのような高い書架が設置されることは、まったくわかりませんでした。知ったのは、今年9月末に完成後の図書館を見学させてもらったときでした。『ここに本を置いて、使えるの?』と驚きました」

 さらに興味深い事実がひとつ、浮かび上がってきた。それは、2018年11月に酒井直人区長が、国内初のツタヤ図書館をオープンさせた武雄市を視察に訪れていたことである。当然のごとく図書館も訪れており、自らのフェイスブックに「武雄市立図書館は、以前から憧れていた」ことを告白したため、「中野区にもツタヤ図書館ができるのでは」とのウワサがたちまち巷を駆け巡ることになった。

 中野駅前のサンプラザの解体や図書館の統廃合を決めていた田中大輔前区長(自民・公明・維新推薦)を破って、この年の3月に当選したばかりの酒井区長(立憲、国民民主推薦)は、区制改革の期待も大きかっただけに、「ツタヤ図書館に憧れていた」との発言には落胆した市民も多かったに違いない。

 そこへ、今回のツタヤ図書館ばりの超高層書架の問題が出てきたわけだ。酒井区長は、指定管理者にCCCを選定して各方面からの批判を浴びることを嫌い、設計者に要望を伝えてデザインだけツタヤ図書館ふうにしたかったのではないのかとの見方も広がっている。ある図書館関係者は、こんな感想を漏らす。

「設計者が、このような奇を衒ったものを自ら提案するとは思えません。図書館管轄部署は反対することもできず、これをどのように使うのかの計画すら、いまだにできていない状態になっています。ツイッターの公式アカウントについても、指定管理業者は問題を引き起こしかねないのは十分に分かっているはずで、自らの意思でトラブルを呼び込むことはしないはずです。それを行わせる力を持ち、自分にとって大いに得になると信じた人間が、全体の黒幕であると思います」

 今回の件について、区の担当部署である教育委員会子ども・教育政策課に聞いてみた。