さて、この「140万円」の考え方ですが、個人的なお金のトラブルであれば十分対応できると思います。たとえば、多重債務者でサラ金やクレジットカードのローン5社にそれぞれ100万円の借り入れがある場合、総額では借金は500万円となりますが、複数の貸金業者について「個別の債権」とします。1件につき140万円以下なので、認定司法書士が受任できます。
もちろん、金額については客観的に証明できなくてはなりません。債務者と司法書士だけではなく、債権者である貸金業者との間でも合意がなければなりません。
利息計算の問題もあります。裁判実務では利息を充当して計算する「利息充当方式」ですが、無利息で計算して過払い金額を少なくする例もあるようです。利息を充当して140万円を超えてしまうと受任できなくなるので、わざと少なく計算するのでしょう。それでは何のための司法書士か、わかりません。140万円を超える可能性があれば弁護士に依頼すればいいだけですが、何が何でも受任したい司法書士もいるようです。
ちなみに、訴訟の報酬について「司法書士は弁護士より安い」といわれているようですが、これは都市伝説のような話です。報酬は法定の範囲で各事務所が決めており、司法書士より弁護士のほうが安くなることもあります。
もちろん東亜国際合同法務事務所は適正な価格で受任しているので、ご心配は無用です。「困ったなあ。東亜国際合同法務事務所に相談に行こうかな?」と思ってもらえるような事務所にしたいと思っています。私は行政書士と宅建士の資格も持っているので、お役に立てることも多いと自負していますよ。
――9月には、司法書士や弁護士による横領事件が相次いで報道されました。
甲村 そうですね。依頼人の銀行口座から1億2000万円あまりを横領したとして懲役5年6カ月の実刑判決を言い渡された司法書士がいました。報道などによると、依頼された相続財産の管理や成年後見などの業務で預かっていた銀行の口座から6年にわたって着服を繰り返していた。選任していた家庭裁判所が「財産管理に不審な点がある」と警察に捜査を依頼して明らかになったそうです。
残念ながら、司法書士による横領事件は今回が初めてではありません。依頼人が認知症などで自身の財産の管理ができないのをいいことに、司法書士や弁護士が横領する事件は後を絶たないですね。
同じ9月には、高齢女性の口座から約2億3000万円を騙し取っていたとして起訴されていた元弁護士が、その女性の遺言を偽造していたとして再逮捕されています。
ほかにも億単位の横領事件は少なくありませんが、実際には発覚していないだけで、被害はもっと多いと思います。こうした事件は成年後見人に就任している場合がほとんどですが、この成年後見については別の機会にお話しします。
――司法書士や弁護士だけでなく、経理担当者など企業における横領事件も昔から問題になっています。こうした横領を防ぐには、どうすればいいのでしょうか?
甲村 難しいですね。職務として他人様のお金や預金通帳を預かることも多いので、チェック体制を厳しくしただけでは、完璧には防げないと思います。また、横領事件が起こる背景には、資格を持っていても稼げないという事情があります。稼げていれば少しは防げるのかもしれませんが、やはり弁護士や司法書士が矜恃とプライドを持つほかなく、プロとしての自覚を持つことが一番です。
矜持と英語の「プライド(pride)」は似ていますが、ちょっと違うんです。 矜持は「自分の能力を優れたものとして誇る気持ち」という意味で、プライドは「自分の才能や個性、また、業績などに自信を持ち、他の人によって、自分の優越性・能力が正当に評価されることを求める気持ち」を意味します。