スマホアプリを使った「副音声ボイスドラマ」のサービスが実施され、『Yes!プリキュア5GoGo!』の声優さんによるサブストーリーを映画館で聞くことができたのです。この施策は、かつての「プリキュア5」ファンの大人たちの足を劇場に運ばせる結果となりました。
また、2021年10月に公開される映画最新作『映画トロピカル~ジュ! プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』でも、NHK『全プリキュア大投票』で作品部門2位となった人気作『ハートキャッチプリキュア!』(2010年)との共演が予告されていて、こちらもかつてのプリキュアファンの大人を取り込んでいく施策がとられています。
それまでのプリキュア映画は、あくまでも(建前としては)「子どもとその保護者向け」を謳っていたのが、2020年に入り、過去人気作との共演により「かつてプリキュアを観ていた若い女性」をも映画館に呼び込む戦略がとられるようになってきたのです。
これまでも、「春のプリキュアオールスターズ映画」などで、お祭り的に過去のプリキュアが出演することもありましたが、現行作品に過去の人気プリキュアがガッツリと絡んでくるというのは、この先の新しいプリキュア映画の定型のひとつのとなっていくのではないでしょうか。
「子どもとその保護者」に加え、「子どものときにプリキュアを見ていた大人」へ、プリキュア映画のターゲットが変化してきているのです。
もちろん時代とともに対象年齢を柔軟に変えていくのは、他のアニメ作品においても数多く見られます。
例えば、同じ東映アニメーション作品では、2021年に公開された映画『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』、それからプリキュアシリーズの前々作に当たり、当時子どもに大人気だった『おジャ魔女どれみ』シリーズ(1999年から2003年まで4シリーズにわたりテレビ朝日系で放送)も、主人公の“春風どれみ”たちではなく、アラサー女性の交流を主軸とした映画『魔女見習いをさがして』を打ち出し、かつてのおジャ魔女どれみ世代の大人を映画館へと誘いました。
プリキュア映画もこれらと同様に、「かつてプリキュアを観ていた女の子」にも向けたコンテンツ展開のフェーズに入ってきているのではないでしょうか。
これまでは「未就学児+その保護者」をターゲットとしていたプリキュアシリーズは、
1、現行放送のアニメは「未就学児だけではなく小学生」への拡大
2、プリキュア映画は「かつてプリキュアを見ていた大人世代」へも訴求
と、ターゲットの拡張が行われてきているわけです。
子どものテレビ離れや、スマートフォンアプリや動画サービスの隆盛など、未就学児の趣味の多様化に加え、同じテレビアニメでもタカラトミーアーツの「プリティーシリーズ」やサンリオの女児向けアニメ、さらに女児向け実写コンテンツ「ガールズ×戦士シリーズ」などの台頭もあり、もはや女の子向けコンテンツはかつてのような「プリキュア一強」時代ではありません。
東映アニメーション株式会社のIR情報をみても、「プリキュアシリーズ」の国内版権売り上げは、2010年度の全盛期には12.52億円もあったのが、2020年度には6.35億と、全盛期の約半分(50.7%)にまで減少していることも事実です。(もちろん、2020年度は新型コロナ禍の影響も無視できませんが)