つまり2021年になってバンダイは、「これまでのターゲット層が遊べないプリキュア玩具」を本格展開し始めたのです。
プリキュア放送開始から18年間、プリキュア関連商品はこれまで、「変身アイテム」等の主力玩具だけに限らず、塗り絵や鉛筆などの文具、シャンプーや絆創膏、歯ブラシなどの日用雑貨にいたるまで、対象年齢を「3歳以上」として作られてきました。
その慣例を破り、対象年齢6歳以上の玩具を展開した理由として、バンダイのマーケティング担当は「6~9歳の小学生女子は、プリキュアを視聴はしているけど、玩具は買わない」ため、その層へ向けての商品展開だとしています。
キッズコスメ商品のメインターゲットは6歳以上。小林氏は「6~9歳のプリキュア視聴層は多いものの、玩具購入となるとそのほとんどが3~5歳。6~9歳は番組を見ているけど、玩具をほとんど購入していないのでそうした層にアピールしていきたい」と語る。
(『月刊トイジャーナル 2021年2月号』(東京玩具人形協同協会) P.9より)
「幼稚園・保育園を卒園したらプリキュア玩具も卒業」といわれる風潮に歯止めをかけ、小学生にもプリキュア玩具を展開することにより、販路の拡大を狙っていくようです。事実、この「Pretty Holic」シリーズは、小学生女子にかなり好調な売り上げのようです。
もうひとつ、プリキュアのターゲット層に大きな変化がみられるようになってきました。いわゆる「大人の層」へのアプローチです。
プリキュアというと、「子ども層」以外は、いわゆる「男性オタク」がファンとして多くついているイメージを持っている人も多いかと思いますが、実際のところはそうではありません。
子ども層以外でプリキュアを観ているのは「大人の若い女性」が圧倒的に多いのです。
これは、2019年9月14日にNHKで放送されたスペシャル番組『全プリキュア大投票』の全体投票数の結果です。
これはインターネットを使用した投票で、このときは女性票が72.6%を占め、年代別で見ても10~19歳が38.1%、20~29歳が28.7%と10代、20代を合わせて66%を越える結果となりました。
つまりプリキュアは、「女性」、特に10代20代の若い女性により多く支持されているコンテンツであることが、この結果からうかがえたのです。
こうして2020年代のプリキュアは、この「若い女性層」にも目を向けた展開が始まりました。
2021年3月に公開された、プリキュア映画第29作『映画ヒーリングっど・プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』(・はハートマーク)では、2008年に放送されたプリキュアシリーズ第4作『Yes!プリキュア5GoGo!』に登場したプリキュアとの共演が話題となりました。
?『Yes!プリキュア5GoGo!』は、先述のNHK『全プリキュア大投票』でも作品部門で3位に入ったほどの人気作で、女性の投票率が91.6%、10代の投票率が77.1%を占める、若い女性に圧倒的に支持されているシリーズです。
この映画では、2020年放送の『ヒーリングっど・プリキュア』と、2008年の『Yes!プリキュア5GoGo!』が夢の競演を果たしました。
また本作では、今後の試金石ともなり得る「大人向け」の施策も実施されました。