また、市街地を走行する商用車は発進停止を繰り返すので燃費が悪い。しかし、ガソリン代に比べてEVの充電の電気代は5分の1ほどだから、商用EVの維持費は安く、この点でも小型エンジン商用車のEV化は、ユーザー=運輸業者にとって福音なのである。
EV乗用車はすでに米国、ヨーロッパ勢に日本のシェアは奪われつつある。大型EVトラックの開発、販売もまたヨーロッパ、中国に一日の長がある。その上、市街地を走行する小型商用車あるいは小型トラック、バスも、海外勢とくに中国勢に奪われないとは限らない。それを示すかのように、中国国内で47万円のEV軽自動車(宏光)の輸入が始まろうとしている。
こうしたEVの動向にもかかわらず、それでもまだエンジン車、ハイブリッド車にこだわるとすれば、550万人の自動車産業従事者の生活はどうなるのだろうか。
(文=舘内端/自動車評論家)
●舘内端/自動車評論家
1947年、群馬県に生まれる。
日本大学理工学部卒業。
東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京~大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書「トヨタの危機」宝島社 「すべての自動車人へ」双葉社 「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。