東芝、再び経営崩壊…外資系投資ファンドのみならず、国内機関投資家も現経営陣に“No”宣告

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東芝の事業所(「Wikipedia」より/Waka77)

 6月28日、東芝は25日に開いた定時株主総会の議決権行使結果を公表した。反対多数で否決された永山治前取締役会議長(中外製薬名誉会長)の選任議案への賛成比率は43.74%で、続投に必要な過半数を割り込んだ。永山氏は企業統治改革の手腕を期待され、昨夏の総会では97.70%の圧倒的な賛成率で社外取締役に選任されていた。

 再任された綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)の賛成率は77.39%。1年前の89.95%から大きく下がった。監査委員会の委員を務めていた小林伸行氏の賛成率は25.32%と極端に低かった。選任された9人も、このうち7人の賛成率が8割を下回った。2020年の株主総会の運営が「公正ではなかった」とする調査人の報告書が出されたこともあって、株主の不満が広がっていることが明らかになった。

 東芝が今年3月に開いた臨時株主総会で昨年7月の株主総会の運営をめぐって独立した調査を求めた筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネジメントの議案が可決されるという異例な展開となっており、執行部に対する批判は最高潮に達していた。臨時総会に続き、定時総会でも経営陣は完敗した。

総会前に一部提案を取り下げ

「昨年7月の株主総会で海外投資家に不当な圧力をかけていた」とする外部の弁護士による調査報告を受け、東芝は臨時取締役会を開き、定時株主総会に諮る一部議案を変更した。監査委員会委員長の太田順司氏、委員の山内卓氏を除外することを決めた。しかし、指名委員会委員長の永山氏と監査委員会委員の小林氏は役員候補として残された。

 これに海外投資家が反発。東芝株7.2%を保有する第2の株主の3Dインベストメントは永山氏らの即時辞任を要求。米国の議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラス・ルイスは、永山氏らの取締役選任に反対を推奨した。

 永山氏の再任が承認されるか否かが定時総会の最大の焦点となった。東芝の社外取締役に就任したのは20年7月。永山氏を再任する理由は大きく分けて2つだ。永山氏が東芝に加わったのが海外株主への圧力問題が起きた後であることと、承認されなかった場合、この混乱を収拾できる人物がいなくなることへの懸念だった。

 東芝の株主構成は時々刻々、変化している。東証1部に復帰した東芝株が東証株価指数(TOPIX)に組み入れられた2月下旬以降、国内のインデックスファンドによる投資が増加した。インデックスファンドとは株価指数などの指標に連動した運用を目指す投資信託。3月の臨時総会で投票できなかった彼らが、定時総会では議決権を行使した。海外投資家の割合は18年3月末の72.3%をピークに年々減少しており、21年4月末時点で50.4%だった。

 ロイター(6月22日付)が、最新の海外投資家の投票動向をこう伝えた。

<投票記録によると、ノルウェー政府年金基金を運営するノルゲスバンクとフロリダ州公務員年金基金が、永山氏に反対票を投じた。……米公的年金基金のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は、永山氏の再任に賛成。東芝株5%超を保有する米大手ブラックロックも賛成票を投じた>

 永山氏が僅差で再任される可能性が高いというのが大方の読みだったが、敗北した。蓋を開けてみると永山氏の賛成率は43.74%、反対率56.06%。僅差ではなかった。アクティビスト(物言う株主)以外にも、「指名委員会の委員長だった永山氏にも責任がある」と判断した株主が多かったということだ。

 機関投資家の行動指針を定める日本版スチュワードシップ・コードが導入され、議決権行使結果の開示が求められるようになってから、国内の資産運用会社も会社側の意向に沿う「物言わぬ株主」ではなくなりつつあることを、永山氏の再任否決が如実に示している。