東芝、再び経営崩壊…外資系投資ファンドのみならず、国内機関投資家も現経営陣に“No”宣告

【株主総会での賛成比率】

氏名     役職・出身母体        賛成比率    (前年の賛成比率)

<再任>

・綱川智     社長兼CEO                 77.39%      (89.95%)

・永山治     取締役会議長、中外製薬名誉会長 43.74%(否決)   (97.70%)

・小林伸行  公認会計士                 25.32%(否決)    (85.56%)

・ポール・ブロフ    会計事務所出身        88.22%           (76.60%)

・ワイズマン廣田綾子  投資会社出身       56.31%            (76.64%)

・ジェリー・ブラック   イオン顧問         78.05%         (76.63%)

・レイモンド・ゼイジ   投資ファンド出身      88.08%     (68.99%)

<新任>

・綿引万里子  元名古屋高裁長官            77.49%      (―)

・ジョージ・オルコット   投資銀行出身         67.96%(辞任)   (―)

・橋本勝則     元デュポン副社長           77.39%     (―)

・畠澤守       副社長             66.26%      (―)

投資ファンド出身のレイモンド・ゼイジ氏が指名委員会委員長

 総会後、永山氏が務めていた取締役会議長に綱川社長が就いた。東芝は取締役会議長を原則として社外取締役が務めると定めているが、暫定的に綱川氏がなった。綱川氏の後任については、「早急に社内外の候補者の検討を行う」とした。

 各委員会の委員長の顔触れを見ておこう。監査委員会委員長に元デュポン副社長で新任の橋本勝則氏、指名委員会委員長はレイモンド・ゼイジ氏、報酬委員会委員長はジェリー・ブラック氏。新設した戦略委員会委員長にはポール・ブロフ氏がなった。新任の社外取締役として承認を受けたジョージ・オルコット氏は「総会後の体制を踏まえた結果、取締役を辞任する」と、申し出て了承された。

 永山氏らの選任案が否決されるという事態を受け、新たに発足した指名委員会が追加の取締役の人選を進める。臨時株主総会を開いて株主の賛否を問うことになる。候補者選定は指名委が主導する。東芝はコーポレートガバナンス・ガイドラインで、「取締役の人数は11名程度」と定めている。現状は9人だから2人程度を補充することになろう。

 指名委は全員が社外取締役。委員長のレイモンド・ゼイジ氏は投資ファンド出身で、東芝の大株主の米資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネジメントのアジアの責任者を務めたことがある。

 委員5人のうちゼイジ氏を含む3人は19年の総会でアクティビストとの交渉を経て候補となった社外取締役である。ゼイジ氏の株主総会での賛成率は88.08%で、昨年の68.99%から大幅にアップした。追加される社外取締役の人事案が海外株主寄りでまとまるのは間違いないだろう。指名委の主な任務は、執行役の選任である。なかでも、代表執行役社長の人事は会社の命運を左右する。現在の代表執行役社長CEOは綱川氏。代表執行役副社長が畠澤氏である。

 畠澤氏は新任の社内取締役として選任されたが、賛成率は66.26%と新任の取締役のなかで最も低かった。畠澤氏は1959年4月、秋田県大館市生まれの62歳。82年、筑波大学第三学群基礎工学類を卒業して東芝に入社。原子力事業出身で、電力関連事業に携わり、2018年、東芝エネルギーシステムズの社長に就いた。