東芝・三菱電機・経産省、「ガバナンス」「経営における善悪」への恐ろしいほどの無関心の原因

あまり深く物事を考えていない?

 筆者が一連の問題に底知れぬ恐怖を感じるのは、東芝の経営陣も三菱電機の経営陣も、企業活動の根源的な善悪について、異様なまでに関心が低いことである。意図的にガバナンスを無視しようと思っているのではなく、あまり深く考えずに、こうした行為に及んでいる可能性が高いのだ。

 東芝の調査報告書を読むと、モノ言う株主にどう対処するか、経営陣がそれだけで頭がいっぱいだった様子がありありと伝わってくるし、ガバナンスにおける善悪というものを理解していれば、杉山氏が「取締役には諮ってある」などと、息を吸うように虚偽の説明をするわけがない。

 企業経営あるいはガバナンスに対する基本的な哲学を欠いたまま、いくらコーポレートガバナンス指針などのマニュアル参照したところで、正しい行動が取れるわけがない。日本は以前からガバナンスの欠如が指摘されてきたが、これは極めて根が深い問題であると筆者は考えている。

(文=加谷珪一/経済評論家)

●加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。