――フライトログなどが流出されると、どのような問題が起こるのでしょうか。
鈴木 ドローンを使って高圧送電線の点検などに使うことが可能なのですが、その位置データが流出してしまい攻撃されてしまうと大都市が停電したりしますので、高圧送電線がどこに通っているのか、公開されていないのです。ほかにも原子力発電所や石油の備蓄タンクなどの警備に使われたときのデータの流出なども大きな問題となります。
――国産化の流れは具体的にはどこまで進んでいるのでしょうか。
鈴木 NEDOが国産ドローンを支援するということで、国産メーカーと通信関係、さらにメーカーはベンチャーが多いので製造ラインをもっているところが少なく、そうした製造ラインをもっていてきちんと製造できるところも入っています。今年の初めぐらいに公開実験をやり、5月頃に公表されました。それは国費が投入されていますので、そこで開発されたドローンの新しい技術でオープンにできるものはオープンにされています。特にセキュリティーの技術は公開されていくんじゃないかと思います。
――ドローンのサービス事業では、どのようなところが活躍しているのでしょうか。テラドローンが世界第1位になっているという話も大きな話題になっていますが。
鈴木 サービス展開ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど通信系の会社は無線を使いますから、深く関係してきています。
――ドローンを製造するための部品などは、かなり日本の企業がかかわっていると思いますが。
鈴木 日本製のものもかなり使われています。特にバッテリーなどは日本が強いですから、信頼性のあるものを搭載しようとすると、日本製になります。今の主流はリチウムイオン電池ですが、今後は燃料電池に注目が集まっています。燃料電池はまだ国産でいいものができていませんから、今は海外のものを買ってきて使っています。
ただ、市場があるということがわかれば、いいものができてくると思います。バッテリーもドローン用のバッテリーはあるのですが、自動車用のバッテリーと比べると市場規模が全然違います。ドローンのバッテリー開発はマクセルがやっていたのですが、21年4月1日から積層ラミネート型リチウムイオン電池の企画・開発・販売事業は古河電池に事業承継されました。
――ドローンのマーケット規模は。
鈴木 ドローン自体よりもサービス事業のほうが数倍大きいと思います。
――ドローン事業もかなり認知されてきましたよね。
鈴木 ようやく市民権を得てきました。機体を登録することになりました。ナンバープレートのようなものをつけるんですが、ドローン自体は小さいですし、上空を飛んでいると目視ではナンバープレートは見えませんから、ドローンから電波を出してスマートフォンなどでそれを見ることのできるリモートIDを付けることを義務付けることが今年中にスタートすることが決まりました。機体認証も本格化しまして、先の国会で機体ごとに認証を受ける制度が航空法改正で決まりました。操縦免許の交付も今までは民間でやっていましたが、国の免許制度に変わることが同じく航空法の改正で決まりました。そういう意味では自動車と同じような形で市民権を得つつあります。
――自動車メーカーや三菱重工、川崎重工などが本格的に国産ドローンの開発に参入していく可能性はどうでしょうか。
鈴木 ドローンというよりは、もっと大きな「空飛ぶクルマ」の開発に力を入れていると思います。ドローンも大きくなれば人を乗せることができるようになります。それが「空飛ぶクルマ」なんですが、トヨタ自動車は米国のジョビー・アビエーションに数百億円の投資をしていますし、ホンダ技研は独自で開発を進めてるといわれています。海外では米国のGMやドイツのアウディ、英国のジャガー、イタリアのメーカーなども力を入れています。